死骸を大量放置、湖畔に広がる異様な光景 当事者は怒り「許される行為ではありません」

北米原産のアメリカナマズ 霞ヶ浦で異様な光景
 日本有数の湖である茨城・霞ヶ浦で、アメリカナマズ(チャネルキャットフィッシュ)の死骸が、陸上に大量に放置される事案が複数発生した。SNSで報告され、釣り人による行為との見方も浮上し、「神経を疑うレベル」などと波紋を呼んでいる。一方で、北米原産のアメリカナマズは特定外来生物に指定されており、大繁殖による湖の生態系破壊や漁業への悪影響が深刻化している。Xで注意喚起を行った投稿者に霞ヶ浦の現状、複雑化する“アメリカナマズ問題”について聞いた。

 茨城・かすみがうら市内、霞ヶ浦のほとり。20匹以上のアメリカナマズが無残にも捨てられている。異様な光景だ。

「アメリカナマズが大量に放置されているのを発見いたしました。おそらく釣人の仕業かと思われます。かすみがうらに来て釣りをしていただくのは構いません。むしろ歓迎いたします。

 ですが釣った魚を放置して釣り場を汚すのは決して許される行為ではありません。迷惑極まりない。景観、臭い共に最悪です。釣った魚をご自身で管理もできないようでしたら来ないでいただいて結構です。釣り人としてのモラルとマナーをしっかり身に付けてから戻ってきてください」

 Xを通してメッセージを発信したのは、かすみがうら市地域おこし協力隊として活動している長里涼平(@NagaKasumigaura)さんだ。大量放置を見つけたのは今月6日のことだという。あろうことか、14日にも遺棄されたアメリカナマズの死骸を発見。「もう本当にいい加減にしてもらえませんか?」と、やり場のない思いをぶつけた。

 国立研究開発法人 国立環境研究所のデータベースによると、アメリカナマズは養殖用・観賞用として1971年に米国カリフォルニアから輸入。霞ヶ浦では73年~78年頃に確認されたとしている。影響として「霞ヶ浦では,魚類やエビ類を多数捕食」と解説されている。

 長里さん自身はナマズ漁をしていないが、ナマズに関連する取り組みに従事。「研究に関しては協力隊の活動として自分で捕獲し、胃の中身など生態の確認、活用方法の1つでアメリカナマズを食用だけでなく釣り餌に加工することによる駆除の促進や、アクティビティーの活性化、経済を回せないかを模索しております」という。

 今回の投稿の意図について、「協力隊としてかすみがうらの活性化を目指しているので、訪れてくる人の一部にメッセージを届けたいと思いました。

・かすみがうらの観光地が汚されていることに対して
・かすみがうらで釣りをしている人に向けて
・生き物の取り扱い

 上記3つの観点からモラルとマナーが欠如していると感じ投稿しました」と説明する。

 そもそも、特定外来生物を釣ることは可能なのか。環境省の公式サイトやリーフレット資料などによると、「特定外来生物に指定されていても、釣りをすることはできます」といい、禁止事項として「釣った魚を持って帰って飼うこと、移動させて放流すること」などが挙げられている。

 釣ったその場で魚を放す“キャッチ&リリース”については「問題ありません。また、釣った特定外来生物をその場で締めた上で、持ち帰って食べることも問題ありません」と記載されている。ただ、自治体によっては独自に条例によって外来生物のキャッチ&リリースを禁止している場合があるとのことだ。

 長里さんはアメリカナマズを釣った時の対応について、改めて教えてくれた。「まず前提として特定外来生物は生きた状態での運搬が禁止されています。釣れてしまった場合はその場でリリースしていただくか、締めて(殺して)持ち帰っていただくか、生ごみとして適切に処分してください。リリースする場合は環境省からも明言されている通り法律上は問題はありませんが、その釣り場のある自治体によって禁止されている場合がありますので、必ず釣り始める前に自治体や管理者に確認をするようにお願いいたします」。

アメリカナマズの駆除・防除にも課題 
「『人手不足』『興味関心のなさ』『お金』が問題になっている」

 大量繁殖に悩まされているという霞ヶ浦の実態。駆除などの対策はどうなっているのか。「まず霞ヶ浦に生息する外来種の完全駆除はほぼ不可能だということを念頭に置いておいてください。釣りなどで遊びに来ていただいた1人1人の意識が変わるだけでも駆除数は変わってくると思います。駆除・防除をするうえで『人手不足』『興味関心のなさ』『お金』が問題になっていると感じています。

・人手不足は単純に漁師の数が減っていること
・興味関心は『外来種を駆除して何になる』『生態系を守るメリットが分からない』という考えを持っている人がほとんどであること
・お金は『駆除にかかる費用問題』や『駆除はお金にならない』という環境になっていること

 これらの問題が絡み合って1つの大きな課題につながってると考えています。解決をしていくには、『外来種問題を学ぶ機会』『駆除で経済を回す基盤づくりとそれに伴った雇用関係』で環境保全のメリットを示していく必要があると考えています」と、自身の見解を示す。また、長里さんは駆除による経済創出のアイデアの具現化を試みている。アメリカナマズを釣り餌などに加工できないか自作を重ねているといい、共同開発や委託ができる企業を探しているとのことだ。

 今回の最初の発見の投稿は1.6万件以上のいいね、5000件を超えるリポストの反響を集めた。「これは流石に神経を疑うレベルですね」「外来魚の駆除と言う善行を帳消しにする悪行…」「これは酷いな…信じられない」「気温が上がってアメリカナマズの活性が上がると、毎年放置が増えるんですよねぇ」など、驚きや批判が集まった。

 釣り愛好家からも怒りの声が寄せられ、「本当にこういう事するヒト属の行動は迷惑以外の何物でもないですね」「『来た時よりも綺麗にして帰る』ができない人間がいたようで、同じ趣味をするものとしてお恥ずかしい限りです」といった反応が。

 また、「毎年の最悪な風物詩ですね。1メートル四方のカゴを手前に沈めてその中にリリース出来るようにすれば、回収業者の雇用が生まれたり食材や肥料として使えるんですがね」「外来種駆除ボックスでも用意してみたらいかがでしょうか?」といった解決策を提案するコメントも見受けられた。

 釣り人が知識の理解を深めることやマナーをより向上させることも求められている。長里さんは「釣り人としてのモラルとマナーをきちんと理解してから訪れてください。守ることができないのであれば釣りをしなくて結構です。釣り人の方にとってご自身の首を絞めていることに気付いてもらいたい。釣った魚を放置するのはもっての外です。帰るときには来た時よりもきれいにして帰りましょう」と呼びかける。

 そのうえで、「放置をされるとその場の景観にも悪影響を与えます。種類によってはとげや毒を持っている魚もいます。それを子どもなどが踏んでしまい、ケガをしてしまう恐れもあります。放置された魚を野生動物が持っていってしまい、周りの民家に食べ残しの放置につながったり、釣り針や糸が残っていた場合に野生動物のケガや命を奪うことにもつながります。最後まで責任を持って向き合っていただきたいです」と話している。

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