“ジャンボタニシ農法”SNSで「バイオテロ」と大炎上も…農水省が明かす「規制しない理由」

 水田の稲などを食べ、農作物や生態系に被害を与える恐れのあるジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)。そんなジャンボタニシを巡って、「生きてる除草剤」と紹介する投稿がSNS上で拡散され、批判を集めた。

 騒動となってすぐ、農林水産省(農水省)も公式X(旧Twitter)を更新。「放飼は止めてください!」「除草目的であっても、未発生地域や被害防止に取り組む地域で放飼すると、周辺農地への拡散により悪影響を及ぼします」と注意を呼びかけた。

 また、SNS上では「JA福岡市がジャンボタニシ農法を推奨している」とする情報も拡散されたが、同組合はHP上で「ジャンボタニシを除草のために水田に放つことや、ジャンボタニシを活用した除草を推奨している事実は一切ございませんのでご了承ください」とする声明を発表。「『ジャンボタニシ農法』などと称する農法は、当組合では認知しておりません」(JA福岡市)と、SNS上のデマを切り捨てた。

「放飼は止めてください!」も…「外来生物法」では規制対象外

 騒動となってすぐXを更新した背景について、農水省の担当者に取材すると「SNSの動向をすべて追えているわけではない」としながらも、次のように明かした。

「今回の騒動に限らず、ジャンボタニシを除草目的で使用する人は昔からいたため、農水省では従来よりジャンボタニシの放飼を止めるよう指導してきました。しかしながら、ここ最近SNS上で放飼に関する投稿の数がかなり多くなったことを受けて、改めてわれわれの見解を申し上げました」(農水省・担当者)

 農水省による素早い“情報修正”を受け、SNS上では称賛の声が上がった一方、ジャンボタニシの放飼について「バイオテロだ」「規制してほしい」「違法化してほしい」と不安の声も上がっていた。

 ジャンボタニシは南米原産で、1981年に食用目的で台湾から輸入された。一部自治体では罰則付きの条例により放逐などが禁止されている一方で、ジャンボタニシは国の「外来生物法」で飼養や栽培、保管といった取り扱いが罰則付きで規制されている「特定外来生物」には指定されていない。

 環境省と農水省が作成した「生態系被害防止外来種リスト」に掲載されているものの、同リストでは特定外来生物以外について「外来生物法の規制はありませんが、生態系等への被害を及ぼすおそれがあるため、『入れない、捨てない、拡げない』の遵守など、取扱いには注意が必要です」といった記載にとどまっている。

規制しても「広がりを抑えられない」

 ではなぜ、ジャンボタニシの放飼・移動などが規制の対象となっていないのだろうか。前出の担当者は「農業被害を抑えることを考えると、規制する意味はないと思っている」としてコメントを続ける。

「農水省では外来のものであるかどうかに関わらず、病害虫の対策を行っていますが、ジャンボタニシは農薬を使用するなどきちんと防除対策を行えば被害を抑えられる病害虫であるといえます。

 ジャンボタニシはすでに全国で広くまん延していますが、その原因は地球温暖化の影響など、自然によるものです。たしかに、ジャンボタニシを除草目的で使用する方は昭和の初めからたまにいらっしゃいましたが、これが原因で広がったわけではありません。

 特定外来生物に指定されると、飼育や移動が禁止されることになりますが、ジャンボタニシの場合それをしたところで、現在のような広がりを抑えることには繋がりません。

 一方、特定外来生物に指定されているブラックバスの場合、人の手で池などに持ち込まれることで広がってしまうことから、飼育や移動を禁止することで増加を抑える効果が期待できます。

 将来的に特定外来生物に指定される可能性はあるかもしれませんが、農業被害を抑えるという観点では特段規制の意味はないと考えています」(農水省・担当者)

 稲などを食べ水田に被害を与えているジャンボタニシ。防除対策を行うことで被害を抑えられることや、特定外来生物に指定しても増加を抑える効果が期待できないことなどから、罰則・規制こそ見送られているが、誤った情報をもとにわざわざ水田に害虫を放ち“2次被害”を生み出すことは避けるべきだろう。

弁護士JP編集部

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