熊本県内で、生け垣や庭木として親しまれるイヌマキを食い荒らす外来種のガ「キオビエダシャク」の目撃が相次いでいる。東南アジア原産で、2000年以降、鹿児島県や宮崎県南部まで生息域は広がっていたが、熊本での分布は確認されていなかった。専門家は「今年は鹿児島や宮崎で大量発生しており、熊本にも分布が拡大して被害が出る恐れがある」とみる。
「きれいな色のチョウだと思って調べたら害虫だった。生け垣が食害に遭って隙間が目立ち始めた」。熊日の「SNSこちら編集局」(S編)に声を寄せた宇城市の50代女性は6月27日、自宅の庭を舞うキオビエダシャクの群れを見てため息をついた。近所で被害に遭う家が続出し、駆除に頭を悩ませているという。
さらに北の熊本市内でも目撃が相次ぐ。
「S編」に声を寄せた熊本市中央区の50代女性は「健軍神社の近くで、車の中からでも分かるくらいの数を見る」と証言。森林総合研究所九州支所(熊本市中央区)にも目撃情報が寄せられたという。研究所の金谷整一主任研究員は「昨秋に立田山の実験林でキオビエダシャクを採集した。鹿児島の自宅ではよく目にしていたが、熊本市内では初めて見た。学会に報告する」と驚く。
キオビエダシャクを研究する南九州大学(宮崎県)の新谷喜紀教授(昆虫学)によると、成虫は濃紺の地色にオレンジの帯、幼虫は灰色にオレンジのまだら模様が特徴。人体に害はないが、幼虫がイヌマキなどを食い散らす。2000年代初頭に鹿児島県の薩摩半島周辺で定着した後、10年までに宮崎県南部に生息域を広げていた。
「熊本でも目撃が相次ぐとは…」と新谷教授。25年には大分県でも確認されており、生息域が北上した要因に温暖化を挙げる。「熊本や大分まで広がったタイミングがなぜ今なのかは分からない。熊本でも定着すると思う」とみる。
キオビエダシャクの相次ぐ目撃情報を受け、対策に乗り出す自治体もある。
水俣市は初めて市が管理する主要道の街路樹40本に薬剤を散布して駆除する。市都市計画課は「市内の造園業者から『大量発生している』と聞いた。食害に遭う前に対応したい」と話す。
熊本市教育委員会は、市内の全小中高校に「キオビエダシャクの幼虫が大量発生している」と伝えた。市教委の担当者は「イヌマキは校庭で見られるので、注意喚起した」と話す。
新谷教授によると、キオビエダシャクの成虫が発生するピークは梅雨時期だが、秋以降にも大量発生することがあるという。新谷教授は「成虫がイヌマキの周囲を飛んでいたら、数百匹の幼虫がいると考えられる。庭木のイヌマキを守るなら薬剤を使って適切に駆除してほしい」と呼びかける。(岡本遼)
