特定外来生物コクチバス、長良川で初確認「鮎も食べる」増えれば食害懸念 岐阜・美濃市で成魚1匹

 北米原産の外来魚で特定外来生物に指定されている「コクチバス」が21日、岐阜県美濃市の長良川で確認された。見つかったのは成魚とみられる1匹。これまで木曽三川のうち揖斐川と、木曽川支流では確認されていたが、長良川では初めて。肉食性と高い繁殖力が特徴で、鮎を含む在来の生態系への影響が懸念される。専門家は「個体数が増える前に対策が必要だ」と訴える。

◆低水温や流水にも適応 コクチバスが確認されたのは美濃市の美濃橋の下の長良川。同市のダイバー深和英生さん(55)が21日午前、ツアー客を案内中に発見し、水中カメラで撮影した。「大半の魚は見ればすぐ分かるが、体の模様が独特でこれはまずいと直感した」と話す。写真を見た県水産研究所の徳原哲也試験研究部長は「現段階では数が不明で、影響の大きさはすぐには判断できないが、オオクチバスとは違い流れの速い川や冷たい水にも適応できるほか、食欲旺盛で鮎も甲殻類でも何でも食べる。在来の小型の魚などへの食害が懸念される」と話す。

◆「抜本的対策が必要」早期対応必須 揖斐川と木曽川支流で確認されていたことから、長良川も時間の問題とされてきたが、県里川振興課によると、これまで確認、捕獲の情報はなかった。県に事務局を置く内水面漁場管理委員会は今年4月から、県漁業協同組合連合会の要望を受ける形で、県内の公共用水を対象にコクチバスのリリース(再放流)禁止を指示していた。また県の補助を受けて県漁連が中心となり、釣ったコクチバスの買い取りを進めている中での初確認だった。

 岐阜大地域科学部の向井貴彦教授(保全生態学)は「揖斐川から水路を通じて長良川に入るなら下流で見つかると思っていた。郡上などより上流で別に放流されたのかもしれない」と説明。「増えれば鮎が捕食されて減少することで漁業、友釣り、鵜飼への影響が考えられる。繁殖して個体数が増える前の徹底した対策や、違法放流が生じないようブラックバス釣り自体を全県的に禁止するなどの抜本的な対策が必要ではないか」と早期対応を促した。

 【コクチバス】 スズキ目サンフィッシュ科の淡水魚で肉食性の外来魚。オオクチバスと共に「ブラックバス」と称される。2005年に特定外来生物に指定され、飼育や移動、販売、放流が原則禁止されているが、一部の釣り愛好者に人気がある。オオクチバスと異なり、低水温や流水にも適応できるのが特徴。全国で生息が確認されている。県内では05年、山県市の伊自良湖で確認されたが、水抜きで駆除された。下呂市の岩屋ダムなどに定着している。

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