もし「特別天然記念物」オオサンショウウオを見かけたら 危険性は?捕まえても大丈夫なのか

 国内最大の両生類・オオサンショウウオ。在来種は国の定める「特別天然記念物」に指定されている。一方で環境省は7月1日から、チュウゴクオオサンショウウオや在来種との「交雑種」を「特定外来生物」に指定することを決めた。

 天然記念物は、保護を目的に採集や捕獲が禁じられているのに対し、特定外来生物は自然環境に戻すことが制限され、状況によっては駆除の対象にもなり得る。対応に大きな幅が生じることになるが、私たちはオオサンショウウオを見かけた際に、どうすればよいのだろうか。そもそも、見分けることはできるのだろうか。多くのオオサンショウウオを飼育する京都水族館(京都市下京区)を訪れた。

 話を聞いたのは、同館副館長で展示飼育チーム長の河﨑誠記さんだ。

 京都水族館では現在、成体のオオサンショウウオを17匹展示している。内訳は在来種が1、チュウゴクオオサンショウウオが5、交雑種が11と、交雑種が最も多い。

 チュウゴクオオサンショウウオは食用目的で1970年代に輸入された結果、日本国内の河川に定着した。その後、在来種との交雑が進み、鴨川に生息するオオサンショウウオは現在「9割以上が交雑種」という。

 在来種と、それ以外との見分け方を聞いてみた。河﨑さんによると▽体の斑点が在来種は細かい▽在来種はイボの数が多い▽チュウゴクオオサンショウウオはイボが対になっていることがある▽チュウゴクサンショウウオは頭の幅が広い-などの差があるという。

 実際に同館で展示されている交雑種と在来種を見比べてみたが、記者にはさっぱり区別が付かなかった。そもそも自然環境下で、目の前の2匹を比較するようなことは現実的にほぼあり得ないだろうから、一般人には区別はできないように思えた。河﨑さんによると「専門家でも外見で見誤ることはある。最終的にはDNAを調べるしかない」というのだから、もうこれは無理なのだと思う。

 5月28日の大雨の翌日、京都市北区の鴨川沿いでオオサンショウウオが見つかり、府が保護した。なんとなく大雨の影響で上流の生息域から流されてきたように思えるのだが、実際は周辺に暮らす個体が増水の影響で、岸に上がってしまったケースなどのようだ。

 ということは、オオサンショウウオは割と人の暮らしに近いところにいるということか。河﨑さんは「出町柳のデルタ周辺から下流にも普通に生息しています。夜行性なので昼間は水底でじっとしていますが、夜になると活発に動く姿が確認できます」と話す。

 実は身近に暮らすオオサンショウウオ。うっかり遭遇してしまった時に、危険はないのだろうか。

 オオサンショウウオは肉食で、目に映る動くものに食いつく習性があるのだという。口の中をのぞくと、ギザギザとした牙などは見受けられないため、あまり危なくなさそうな印象だが、実は「シャーペンの芯のような」細く鋭い歯が無数に並んでいる。

 オオサンショウウオに噛まれた指を見たことがあるという河﨑さんによると「血だらけで骨が露出していた」というから、十分に注意が必要だ。オオサンショウウオを見つけた時に正面から手を出したりするのは「絶対にだめ」だそう。また、「しっぽをつかもうとしてもすぐに体をひねってかもうとするので、それも危険」とのこと。

 そもそも、在来種なら特別天然記念物なのでむやみに触ってはいけないのだから、これはまさに「触らぬ神にたたりなし」で下手に手を出したりするのは厳禁だ。

 では、仮に見つけた時にはどうしたらよいのだろうか。河﨑さんによると「川にいるのを見つけた場合は、それが自然の状態なので見守ってもらえばいいので通報は不要」としたうえで、川沿いの歩道など、人の手が届きそうなところにいるのを発見した際には「京都府文化財保護課に連絡してもらうのが最善かつ最短の道筋」という。

 素人目には在来種か否かの判断は難しい。かまれる危険もある上に、在来種でも交雑種でも一般の人は飼育したり移動させたりしてはいけないのだから、これはやはりオオサンショウウオを見つけたら府に連絡した上でじっと見守るしかないようだ。

 在来種は「特別天然記念物」で、それ以外は「特定外来生物」。なんとなく交雑種やチュウゴクオオサンショウウオが「悪者」になってしまうような印象を抱く。河﨑さんは言う。「鴨川の現状に代表されるように『元々いたもののDNAが潰える』ことが問題なのであって、何が悪いというものではない。生息域を分けておかないと絶滅してしまう、指定しないと止められなくなっているという状況に歯止めをかけないと行けないんです」

 そもそも、交雑がここまで進んだのは人が中国の個体を持ち込んだことが原因だ。厳しい環境下で生きるオオサンショウウオを「これは悪者」などと決めつけるのは、人間のエゴそのものなのかもしれない。

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