日本の生態系に影響を与える外来種を駆除している学生たちが、宮城県石巻市にいます。さらに活動は駆除だけにとどまらず、自分たちで調理をして食べることもしているのです。
■大学生が外来種を駆除
6月20日未明。奇妙な鳴き声が響く石巻市の川で、網を持った4人の大学生が何かを探していました。
大学生 佐藤歩夢さん:
「いまの季節、いっぱい鳴き声が聞こえますけど、たくさんいるのでウシガエルを捕まえます」
ウシガエルを捕獲し、駆除しようというのです。すると、水際でじっとしている生き物を見つけます。慎重に網を構え、1匹目を捕獲しました。
ウシガエルはアメリカが原産で、100年以上前、食用として国内に持ち込まれて、全国に広がったとされています。しかし、希少な在来種を捕食するため、今は、外来生物法の特定外来生物に指定されています。
大学生 奧山倖成さん:
「(捕まえた)このぐらいのサイズがたくさんいる。日本の生き物をばくばく食べてしまう」
この日は、3時間余りで8匹を捕獲しました。
■捕獲したウシガエルを調理?!
特定外来生物に指定されているウシガエルは、飼育することや生きたまま運ぶこと、別の場所に放すことが禁止されています。このため、学生たちは、捕まえたウシガエルはその場で処理し持ち帰ります。
大学生 伊藤龍斗さん:
「食用として持ち込まれたものが野生化して逃げている。カエルは見た目が気持ち悪いが、『おいしいよ』ということをみんなに伝えたい」
捕まえて終わりではありません。自分たちで調理をして食べるのです。足の肉などを取り、しっかりゆでます。
そしてレタスとパプリカを添え、一品を完成させました。ウシガエルの肉を使った夏野菜サラダです。
食欲も旺盛な学生たち。さっそく口に運びます。「んー、おいしい」との声。
大学生 伊藤龍斗さん:
「(ウシガエルは)匂いや食感に不安はあったが、鶏肉に近くて自分は鶏よりおいしいかなと思うくらい」
■活動のきっかけは「魚の餌取り」
沖縄などに生息するエビにちなんだ「こんじん」というグループ名で、外来種の捕獲などの活動をしている4人は、石巻専修大学理工学部生物科学科の2年生です。
全員が県外出身で、元々、生き物に興味がありました。
大学生 松本太一さん:
「生物系なので自分たちに合っていて、海のことも学べて面白い」
活動のきっかけは、去年の夏、奧山さんが、飼育する魚のエサを取りに用水路に来たところ、ウシガエルなど多くの外来種や未利用魚に気付きました。
最初は興味本位で食べてみましたが、とてもおいしいことが分かったのです。
奧山倖成さん:
「めちゃくちゃ楽しい。とれた時の感動もあるし、料理をしてうまくいった時、ふだんはこの魚おいしくないとみんなが言っているが、それを料理してうまかった時が最高」
■「命は決して無駄にしない」食べ残しに心を痛め
さらに、活動を始める前から、アルバイト先の飲食店で多くの食べ残しに心を痛めていたこともあり、捕獲した生き物の命は決して無駄にしないという思いが芽生えました。
奧山倖成さん:
「(アルバイト先で)フードロスが多くてそれがすごく問題。世間に食のありがたみ、こんな生き物もおいしいんだよ、利用価値があるんだよということを伝えられたらと思っている」
■SNSで調理方法を紹介「一番おいしいのは…」
例えば、ナマズはどんぶりやハンバーガーに、ミドリガメは酒蒸しに調理します。
今までで一番おいしかったのは、特定外来生物のアカミミガメいわゆるミドリガメです。
松本太一さん:
「みんなが食べてこなかったようなもの、本当においしいのかということで食べている。全員一致でカメが一番おいしかった」
奧山倖成さん:
「宮城県内をいろいろ捜索してみたいなというのと、宮城だけではなくて遠出をして他の県の違う生き物、魚系と動物系をいろいろ食べたいなと思っている」
自分たちで外来種を捕獲し、尊い命をいただく。生態環境を守る学生たちの活動はまだ始まったばかりです。
学生たちは、捕まえたウシガエルはその場で処分をした後に持ち帰り、また調理にあたっては、必ず十分な加熱をしてから食べています。
4人の「こんじん」の活動では、8月5日に、外来種や未利用魚などを扱ったバーベキューを、石巻市で行なう予定です。