遺伝子組み換えの赤いメダカを無承認で育成したなどとして、警視庁生活環境課はカルタヘナ法違反の疑いで、埼玉県春日部市のメダカ販売店経営、増田富男容疑者(67)ら男5人を逮捕、東京都練馬区の会社員の男(35)ら男女4人を書類送検した。調べに対し、9人はいずれも容疑を認めているという。カルタヘナ法違反での逮捕は全国初。
カルタヘナ法は、平成16年2月に施行された、遺伝子組み換え生物を規制する法律の通称。遺伝子組み換えの生物を飼育するには、環境相の承認が必要になる。
生活環境課などによると、平成21~22年、当時東京工業大の大学院生でメダカの研究をしていた練馬区の会社員の男が、研究目的の遺伝子組み換えのメダカの卵を持ち出し、知人に譲渡した疑いがある。その後、愛好家らに譲渡、販売される中で繁殖。同課は、遺伝子組み換えメダカが約50人にわたったとみており、約1400匹を押収した。2匹で最高10万円で取引されていた。
増田容疑者ら8人の逮捕、書類送検容疑は、令和3年7月~4年12月ごろ、自宅などで遺伝子組み換えメダカを飼育したなどとしている。練馬区の会社員の男の送検容疑は、平成21~22年、遺伝子組み換えメダカの卵を研究所から持ち出したとしている。
摘発された遺伝子組み換えのメダカは、日本在来種の「ミナミメダカ」の遺伝子に、サンゴとして知られる「イソギンチャクモドキ」の赤い色素を含む遺伝子を結合させて作られた。このメダカは、紫外線を照らすと赤く光り、メダカのひれや骨の再生状況を観察するため、研究に用いられるという。
静岡大教育学部の加藤英明准教授(保全生物学)は「生態系への影響は確認されていないが、自然界に流出すると深刻な遺伝子汚染が生じる可能性がある。万が一、遺伝子組み換えのメダカを飼っている場合は絶対に川などに放さないでほしい」と話している。
文科省は8日、東工大に対し、再発防止を徹底するよう文書で厳重注意した。警視庁は遺伝子組み換えメダカについての問い合わせや通報は、全国の地方環境事務所に連絡するよう呼びかけている。