立ち入り禁止なのに…釣り具絡まり死ぬ野鳥「マナー守って」

 「立ち入り禁止の池に釣り人が残したルアーや釣り糸がありました」。福岡市の女性から、西日本新聞「あなたの特命取材班」に憤りの声が寄せられた。場所は今津干潟(西区)の近くにあるため池。取材を進めると、今津干潟で釣り具が脚に絡まり、死んでいる野鳥が発見された。コロナ禍で密を防ぐレジャーとして人気の釣りだが、地元住民は「干潟周辺には貴重な生き物も集まる。釣り人はマナーを守って」と呼びかけている。

 女性は昨年5月、新西部水処理センター(同)前にある農業用ため池「今出(いまいで)1号池」で、フェンスを乗り越えて釣りをする男性2人を見かけた。現場は絶滅危惧種のクロツラヘラサギなど野鳥が集まる姿がみられ、地元住民からは「二つ池」と呼ばれている。2人が立ち去った後、フェンスに釣り糸とルアーが引っかかっていたという。

 ため池はフェンスで囲われ、「立ち入り禁止」の看板がある。池を管理する市は「もちろん釣りも認めていない。勝手に入れば、不法侵入罪に問われる」(農業施設課)。

 地元の今津校区自治協議会によると、5~6年以上前から釣り人が立ち入る姿や、放置された釣り具が目撃されるようになった。協議会は2021年、ため池付近に「釣り禁止」の看板を設置し、啓発を強めていた。神武満春会長は「釣り糸が引っかかったカモが目撃されたこともある。野鳥への影響が心配だ」と語った。

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 「今津干潟でも、釣り人のルアーが巻き付いた野鳥が死んでいます」。あなたの特命取材班には、別の投稿も寄せられた。連絡をくれた工藤惇三さん(79)の案内で1月23日の午後、干潮時の干潟を歩いた。

 すると海岸で黒っぽい羽の野鳥が息絶えていた。脚には細長い魚形のルアーが巻き付き、針が刺さっているようだった。「餌場の水辺に放置されたルアーに引っかかり、身動きが取れないまま衰弱したのでは」と工藤さん。久留米市鳥類センターに確認すると、野鳥は「ウミウ」か「カワウ」とみられるという。

 工藤さんはボランティアで月に2回、干潟のごみ拾いをしている。1回当たり45リットルのごみ袋二つ分のごみを集める。中には、ルアーや釣り糸が絡まった浮きといった釣り具も目立つ。軍手をしているが、絡まった釣り糸の針が手に刺さりそうになったこともある。

 付近は野鳥のほか、カブトガニの産卵場としても有名な場所だ。工藤さんは「よそにはない自然が美しい場所。ごみや釣り具を捨てていくのは、もってのほかだ」と訴えている。

 (黒田加那)

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