恐るべしツマアカスズメバチ
「九州地方でツマアカスズメバチという外来種のスズメバチが急激に数を増やしています。彼らは繁殖能力が高いため、これからすさまじい勢いで増殖していくことが考えられるでしょう」
こう語るのは九州大学大学院農学研究院准教授の上野高敏氏だ。外来種であるこのハチの脅威について、上野氏が続ける。
「ツマアカスズメバチは中国南部が原産ですが、入り込んだヨーロッパでは年間100kmという驚異的なスピードで広がったという推定もあります。
韓国の事例でいえば最初は釜山へ入り、その後大邱へと生息域を広げました。この2都市は緯度でいうと日本の東北地方とあまり変わりません。そのため、日本でも北海道を除くほとんどの地域に定着する可能性があるのです」
そうなった場合に想定されるのが、在来種であるオオスズメバチやキイロスズメバチと生息域を巡ってぶつかることだ。
スズメバチ頂上決戦の幕開けか
「在来種のスズメバチ同士がエサを巡って争うことはしょっちゅうあります。今後そこにツマアカスズメバチが入り込むことによって、在来種と外来種のスズメバチによる抗争が起こる危険性は当然あるのです」(上野氏)
特に、キイロスズメバチは巣をつくる場所がツマアカスズメバチとよく似ている。そのため巣の乗っ取りや、繁殖を邪魔するための女王バチへの攻撃といった、血で血を洗う抗争が繰り広げられる可能性が高い。
「争いが行われた場所の近くでは、スズメバチの大量の死骸が足元に散らばっていることもあります。スズメバチの抗争は、相手の巣が壊滅するまで徹底的に行われるのです」(駆除業者であるハチ駆除ドットコムの担当者)
“キラービー”の頂点を懸けた争いが、いま始まろうとしている。
「週刊現代」2022年9月24・10月1日号より