兵庫県朝来市生野町の市川水系で、国の特別天然記念物・オオサンショウウオ(別名・ハンザキ)を調査する同市のNPO法人「日本ハンザキ研究所」(岡田純理事長)が、環境DNA分析器を新たに導入した。川の水を分析することでハンザキの生息の有無が判断でき、昨年、特定外来生物に指定されたチュウゴクオオサンショウウオの早期発見、駆除に活用できるという。(谷下秀洋)
環境DNA調査は、生物個体から直接採取するのではなく、水や大気といった自然の中で排泄(はいせつ)物や粘液、剝がれ落ちた体毛などから特定の生物種のDNAを検出する方法。岡田理事長らの研究チームが5年前、環境DNAと生息調査を併用したハンザキの生息調査方法を確立し、研究論文を報告している。
分析器は高価なため、ハンザキ研はこれまで生息エリアで採取した川水のサンプルのDNA分析を外部に委託していた。ただ、結果判明に1カ月以上かかり、費用面からサンプル数も限られるなど制約があった。
昨年末に分析器1台(約300万円)を導入したことで、費用を気にせず納得いくまでサンプルを採取し、調査研究を進めることができるという。研究員の高木香里さんは「分析器では数日で判明します」と歓迎する。
また、環境DNAの活用はハンザキの発見情報の少ないエリアで生息の有無の判断になり、スタッフの調査の負担軽減にもなる。
岡田理事長は「ハンザキは夜行性のうえ、小さな幼生の確認は専門家でも難しい。環境DNAの分析器導入で生息調査がやりやすくなった」といい、今後は広範囲でハンザキの分布モニタリングに活用する考えだ。
さらに、分析器は特定外来生物に指定されたチュウゴクオオサンショウウオの早期発見、駆除にもつながる。
チュウゴクオオサンショウウオは50年以上前に食用として輸入されたが、その後、人の手で川などに放流され、全国各地で在来種のハンザキとの交雑化が広がっている。交雑個体は在来種より成長が早い傾向にあり、このまま放置すると在来種の絶滅の恐れがあるという。
今のところ、市川水系など県内の河川でハンザキの交雑個体の確認報告はないが、岡田理事長は「分析器を使って、在来種の生態系を守っていきたい」とし、「河川でハンザキを見つけた場合は、最寄りの自治体に連絡してほしい」と話している。