鹿児島県奄美大島で駆除を進めてきた特定外来生物マングースについて、環境省は3日、「根絶宣言」を発表した。ハブ対策などの目的で持ち込まれて約半世紀。いったん定着したマングースがこれほど大きな島で根絶されたことはなく、「世界的に前例のない、生物多様性保全上の重要な成果」としている。
環境省などによると、奄美大島のマングースは、1979年ごろに、先に導入されていた沖縄から持ち込まれた。だが、島内で繁殖してアマミノクロウサギなど希少な野生動物を襲っていることがわかり、国が2000年度から駆除を本格化した。外来生物法が施行された05年度にはフイリマングースを特定外来生物に指定。捕獲のプロ集団「奄美マングースバスターズ」を結成するなど、対策を強化してきた。
記録に残る捕獲頭数は累計3万2千匹余り。00年代には年2千匹を超えたが、18年5月以降はゼロが続き、わなや自動撮影カメラ、探索犬でのモニタリングでも生息情報は確認されていない。一方、アマミノクロウサギなど在来の希少種の生息数は近年増加傾向にある。
3日、奄美大島で開かれた専門家による検討会は、こうしたデータをもとに数理モデルで算出された根絶確率が23年度末時点で98.9%~99.7%に達したことを確認。「根絶した可能性が極めて高い」と評価した。これを踏まえ、環境省が「マングースが奄美大島から根絶された」と宣言した。
奄美大島は21年に、徳之島や沖縄島北部、沖縄県西表島とともに世界自然遺産に登録されている。宣言は世界遺産という「人類共通の財産」への大きな脅威が一つ取り除かれたことも意味する。
マングースはハワイやカリブ海の島などにも持ち込まれたが、定着後に完全排除に成功したのは面積約1平方キロ以下の島だけ。奄美大島は東京23区の合計よりひとまわり大きい712平方キロもある。
池田透・北海道大名誉教授(保全生態学)は「これほど大きな島で、侵略性の高いマングースを根絶できたという成果をまずは大いに評価したい。四半世紀というと長くかかったように思うかもしれないが、これだけの年月で本当によく根絶に至ったと思う」と話す。(安田朋起、矢田文)