中国で絶滅したとされる世界最大の両生類「スライゴオオサンショウウオ」が日本国内で東京の水族館と広島の動物園で飼育されていることを、京都大学の西川完途教授(動物系統分類学)らが発見した。日本固有種で国の特別天然記念物でもある「オオサンショウウオ」と外来種の交雑状況を調査する過程で分かった。クローン技術と人工繁殖でスライゴオオサンショウウオを保全し、将来的には元の生息地に返すという計画もあるという。
日本固有種のオオサンショウウオは1952年に国の特別天然記念物に指定された。1960年代以降、中国からイボや目の形態に違いがある「チュウゴクオオサンショウウオ」など外来種が持ち込まれているが、一部が野外の河川に逃げ出して日本のオオサンショウウオと交雑。中間の形骸をした交雑種が増えており、絶滅危惧種を含む生態系への被害が問題視されている。
西川教授は、国内におけるオオサンショウウオの交雑状況を調べるために、京都・鴨川の個体や水族館などが飼育している個体73個体のDNAを解析。データベースでDNA情報が分かっている個体と合わせて計109個体について、母親の遺伝情報を引き継ぐミトコンドリアDNAの塩基配列を用いて、分類の参考となる系統樹をつくった。
系統樹で外来種チュウゴクオオサンショウウオと判別したのが75個体と大半を占めたが、14個体は別のグループをつくっていると判別した。このグループはチュウゴクオオサンショウウオに極めて近いスライゴオオサンショウウオを示しており、日本国内の4個体が含まれていた。オオサンショウウオの体長は60~70センチだが、スライゴオオサンショウウオには同1メートルを超える個体もいる。
4個体のうち、2個体はサンシャイン水族館(東京都豊島区)と広島市安佐動物公園が今も飼育している。残り2個体のうち1個体はすでに死亡しており、1個体は岡山県内の個人宅にいたものの現在は行方知れずという。
飼育されている2個体はいずれもオス。この2個体では繁殖できないが、京都大学はメスの細胞組織を冷凍保存している。人工繁殖では組織からメスのクローン個体を生み出し、そのメスと生きているオスの生殖細胞を用いる。西川教授は「厄介者とされる外来種が世界的な種多様性の保全に貢献することがある」と話している。
研究は、国立科学博物館や琉球大学、北九州市立いのちのたび博物館などと行い、1月31日付けで英科学誌「サイエンティフィックリポーツ」に掲載された。