ヤンバルクイナ、名護で初確認 天敵減り生息範囲広がる 沖縄県設置のカメラに写る

 世界自然遺産登録地のやんばるの森に生息する国指定天然記念物のヤンバルクイナが今年7月、沖縄県名護市源河の山中で確認されていたことが26日、分かった。県が設置するマングース対策用のカメラに写っていた。1981年に新種として発見されて以降、同市で正式に見つかったのは初めて。(北部報道部・松田駿太、社会部・普久原茜)

 県自然保護課によると、撮影されたヤンバルクイナは1羽で、陰から顔を出している様子だという。県は近日中に写真などを公開する予定。担当者は「マングース対策の成果でヤンバルクイナにとっての脅威が減り、生息範囲が広がりつつある」と説明する。

 やんばるの森にはもともと肉食の哺乳類がおらず、ヤンバルクイナは外来種として進入したマングースやノネコに捕食され生息数を減らしてきた。マングースがやんばる地域で生息域を広げていた2005年、環境省の調査では推定個体数が720羽まで減少。当時のシミュレーションでは15年以内に絶滅するとの試算が出ていた。

 県や環境省、地元関係団体は絶滅を阻止するため、大宜味村塩屋と東村の福地ダムを東西につなぐ「SFライン」にマングースの北上防止柵を設置し、ライン以北でのマングース根絶を目指してきた。

 環境省はマングースの捕獲専門集団「やんばるマングースバスターズ」を結成。SFライン以北で00年度から21年度までに5813匹のマングースを捕獲した。こうした取り組みで、21年度にはクイナの推定個体数が1702羽まで回復した。

 生息域も拡大している。00年代には国頭村と東村の一部にのみ生息している状況だったが、近年では「SFライン」周辺でも確認されている。

 今月16日には、これまで目撃情報がほとんどなかった東村平良地区でも地域住民が撮影に成功するなど、生息範囲が徐々に広がってきた。

 名護市内で確認されたことについて、ヤンバルクイナの保護に取り組むNPO法人どうぶつたちの病院沖縄の長嶺隆理事長は「生息域の南限ラインが降りてきて、よく走る個体が到達したのでは」と分析する。一方で「名護市内はマングースやノネコがやんばる地域と比べても多く、定着するのは難しい。名護市もクイナが生息しやすい環境整備に本腰を入れるべきだ」と話した。

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