生物多様性を守るために外来種を駆除し、その命を奪うことがある。環境教育の重要性が広まるなか、大切な命を奪う行為を子どもにどう伝えたらいいのか。
「本心としては外来生物の防除作業に子どもを関わらせたくない」
「外来生物の防除をするよりも、子どもにはたくさんの生きものと触れ合う自然体験をしてほしい」
今年4月、多摩川を中心に生き物観察ガイドをしている川井希美さん(39)のSNSでの投稿が議論を呼んだ。
「批判は覚悟していた」という川井さん。あえて一石を投じたのは、年100回以上の観察会をする中で、ショッキングな経験をしたからだった。
講師を務めるサイエンス塾の授業で、子どもたちにアメリカザリガニ(アメザリ)を見せた時。「こいつらは殺してもよい」。こんな声が聞こえた。観察会では「駆逐してやる」とアメザリを踏みつぶす子どももいた。
アメザリはもともと日本にいなかった北米原産の生き物。本来の生態系を乱す侵略的外来種として、各地で駆除も行われている。こうした外来種の命を軽視するような言動は、小学校低学年くらいの子に見られたという。
「生き物の命に善悪はないのに、小さな子どもにとっては外来種かそうでないかの短絡的な基準になってしまう。手軽な環境教育として駆除活動が行われるなかで、本来の環境保全でなく、駆除が目的になっているのではないか」と指摘する。
川井さんは自身の観察会で、子どもには外来種・在来種の区別なく、まずは様々な生き物に親しみ、楽しんでもらうことを大事にしているという。
「駆除対象の生き物だとしても、決して殺して『よい』命があるわけではない」