「ブラックバス以上の脅威」琵琶湖に外来ナマズ『チャネルキャットフィッシュ』出現 駆除進める滋賀県は危機感「繁殖すると湖内の魚がそれだけに」

 これまでブラックバスやブルーギルなどの外来魚に生態系が脅かされてきた琵琶湖。その琵琶湖でいま、新たな外来魚が出現しているということです。さらに、悪臭を放つプランクトンも…。“近畿の水がめ”で起こる異変に、滋賀県や京都市が悩まされています。

琵琶湖から流れる瀬田川下流…網にかかるのは『チャネルキャットフィッシュ』ばかり!

 滋賀県の琵琶湖。近畿地方1450万人の飲料水をまかなう“近畿の水がめ”ですが、いま、ある事態に悩まされています。琵琶湖から流れる瀬田川の下流。ここで50年にわたり漁をしている上野欣一さん(64)に、とれた魚を見せてもらいました。

 (漁師 上野欣一さん)
「これは『チャネルキャットフィッシュ』ですね。(Qどういう魚?)ナマズですね、外来の。20年ほど前からとれだしたんですけどね」

 見せてくれたのは、北アメリカ原産の外来種のナマズ「チャネルキャットフィッシュ」。8本のひげに鋭いひれのとげが特徴で、特定外来生物に指定されています。上野さんはこの日、在来のウナギやスッポンを狙っていたのですが、網にかかるのは、チャネルばかり。

 (漁師 上野欣一さん)
 「以前はニゴイとかウナギも結構とれていましたからね。ここは本当に何も(チャネル以外)いない川になりました。去年、私だけでもチャネルを100匹以上とっていますので」

 大きいものは体長80cmを超え、エビやハゼなど様々な魚を食べてしまうのです。

茨城・霞ヶ浦でも2000年頃から激増 漁獲量が半減する事態に

 こうした事態は全国各地でも。茨城県の霞ヶ浦では2000年ごろからチャネルキャットフィッシュが激増。2016年に漁を取材すると、ウナギが1匹・魚が3匹・カニが5匹に対して、なんとチャネルは200匹とれました。霞ヶ浦の漁獲量はこの15年でほぼ半減したのです。

 滋賀県を流れる瀬田川でいま、急増するチャネル。心配されるのはその先です。

 (漁師 上野欣一さん)
 「チャネルがそれ以上、琵琶湖に上った時を一番危惧しますね。京都で増えてまた上がってくるみたいな形でなんぼやっても絶滅にはいかないと思います」

 チャネルキャットフィッシュが繁殖しているのは、瀬田川の下流にある京都府の天ヶ瀬ダム付近。ここでは漁が行われないため、大繁殖したチャネルが瀬田川を遡上し、琵琶湖に本格的に流入するのをおそれているのです。

過去にはブラックバスやブルーギルが急増…同じ轍は踏めない!駆除を進める滋賀県

 こうした事態に、滋賀県も対策に乗り出しています。

 (滋賀県水産試験場 石崎大介さん)  
「琵琶湖に侵入してきている特定外来生物のチャネルキャットフィッシュの調査に行きます。もしこれが琵琶湖内で繁殖してしまうと、おそらく琵琶湖内の魚がチャネルキャットフィッシュだけになってしまう。オオクチバス(ブラックバス)とかブルーギル以上に脅威な外来魚」

 滋賀県は2019年からチャネルキャットフィッシュの駆除を行っています。危機感の裏にあるのは過去の苦い記憶です。約20年前、ブラックバスやブルーギルなど外来魚が急増し、琵琶湖の生態系に大きな影響を与えました。粘り強く駆除を続けてようやく問題が解決しかけた矢先、チャネルキャットフィッシュが出現。県としてはもう同じ轍は踏めないのです。

 取材した日の調査では…。

 (滋賀県水産試験場 石崎大介さん)
 「これはまだ小さいので子どもです。これで30cmくらいですかね」

 琵琶湖までわずか3kmの地点でもチャネルキャットフィッシュが生息していました。去年、瀬田川下流で300匹、琵琶湖でも10匹が捕獲されるなど増加の兆しがあることから、さらなる駆除を進める方針です。

 (滋賀県水産試験場 石崎大介さん)
 「チャネルキャットフィッシュについては、琵琶湖内では根絶するようにしなければならないと考えています。瀬田川から上がってこないようにするような対策が必要ではないかと思います」

琵琶湖から流れて来た水『カビのようなにおい』

 京都からやってくる外来ナマズに悩まされる琵琶湖。さらに、水の「におい」にもある異変が起こっているようです。京都市の蹴上浄水場で話を聞きました。

 (京都市上下水道局 圓山貴久浄水係長)
 「(Qこの場所は?)滋賀県の琵琶湖から流れてきた水をこちらから水道に引いております。水道水の異臭の原因となりますので、京都市としても苦慮しております」

 水道水の99%を琵琶湖の水でまかなっている京都市。一体どういうことなのか。取材班が浄水前の水を嗅いでみると…。

 (記者リポート)
 「普通の水のにおいにも感じるんですけれども、奥の方に少し生臭いにおいがするかなといったような感じです」

 水から漂うのはカビのようなにおい。とても飲めるものではありません。

 その原因となっていたのは、プランクトンの一種「フォルミジウム」。カビ臭の原因となる物質を出すものだといいます。京都市では2019年、フォルミジウムが25年ぶりに検出され、去年は水質基準の18倍という高い数値が検出されたのです。その影響で、水道水の脱臭に使われる活性炭の使用量が急増。費用は3年前の3倍、5億円にも上ります。これは財政難の京都市にとってまさに、弱り目に祟り目です。

 (京都市水道局 圓山貴久浄水係長)
 「フォルミジウムが正直出てきてほしくはないですが、水質検査の回数を増やすなどして、費用を削減できるところはどんどん削減していきたいと考えております」

フォルミジウム増加の原因は?

 では、なぜフォルミジウムが増えているのか。取材班は琵琶湖近くにある県の研究施設へと向かいました。

 (滋賀県琵琶湖環境科学研究センター 藤原直樹専門員)
 「琵琶湖の水の調査の中で出てきたプランクトンです。嗅いでみますか?」
 (記者)
 「失礼します。…あっ、鼻に一瞬でつんとくるようなカビのにおいがしましたね」

 におったのは、京都市でも感じた“あのカビのにおい”。フォルミジウムはやはり琵琶湖で増加していたのです。しかし、水質が改善しつつある琵琶湖でいま、なぜフォルミジウムが急増しているのか、専門家も首をかしげます。

 (滋賀県琵琶湖環境科学研究センター 藤原直樹専門員)
 「なぜ検出の頻度が増えたかっていうのは、実際のところはなんともわかりません、いまのところ。想定されるものとしては、気候変動の影響もあるのではないかと」

 外来ナマズにプランクトンと、琵琶湖で相次ぐ異変。“近畿の水がめ”を守るための対策が求められています。

 (2023年6月5日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『憤マン!』より)

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