クロウサギの生息域が拡大、南北の分断解消へ 交配進めば遺伝子多様化→絶滅リスク低下も 天敵・マングースは秋にも根絶宣言 鹿児島・奄美大島

 奄美大島に生息する国指定特別天然記念物アマミノクロウサギの生息域が拡大し、島の南北に分断していた個体群がつながりつつある。遺伝子が多様化して感染症などで絶滅するリスクが低下すると考えられ、環境省の担当者は歓迎する。天敵の特定外来種マングースも姿や痕跡が5年近く確認されておらず、同省は早ければ今秋にも根絶宣言を出す。

 かつてアマミノクロウサギは奄美大島のほぼ全域に生息していたと考えられている。1979年に毒蛇のハブ対策で持ち込まれたマングースに捕食されて激減。2002~03年に専門家が行った調査では、島の中部がぽっかり空白地帯となり、主な生息域は南部で北部は龍郷町のごく一部に限られていた。

 約200万年前の地殻変動で大陸から切り離され、世界で奄美大島と徳之島にのみ生息するアマミノクロウサギは、ただでさえ遺伝子の多様性が低い環境下にある。分断で生息域がさらに限定され、繁殖力や感染症への抵抗力の低下が懸念されていた。解消の実現で南北の遺伝子の交流再開が期待できる。

 環境省は06年から調査を継続し、山中で見つかるふんやモニタリングカメラ映像、死体が回収された地点を集計している。生息域の回復は年々続く。島の中部に位置し、希少野生生物の観察スポットとして人気が高い奄美市の金作原国有林一帯でも近年は姿が見られるようになった。同省の鈴木真理子・希少種保護増殖等専門員は、「確認できていないだけで、実際は既に個体群がつながっている可能性もある」と分析する。

 マングースの駆除は、00年から本格的に始まった。多い年は3000匹以上を捕獲していたが18年春を最後に捕獲実績はなく、ふんや足跡も見つかっていない状況が続く。寄せられた目撃情報を基に探索犬が調べても痕跡は確認されず、島内全域のモニタリングカメラにも姿が写っていない。

 同省は22年度中に根絶を確認するための評価手法を策定する。23年度夏に前年度のデータを取りまとめて根絶確率を算出し、専門家の意見も踏まえて根絶宣言を出すか判断する。アマミノクロウサギの21年時点の生息数は、推定で3万4427~1万24匹。03年時点の最大5000匹から大幅に増えた。

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