生態系保全区域「30%に拡大」 COP15、30年までの新目標採択

 カナダ・モントリオールで開催中の国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)は19日、生物多様性の損失を食い止めるための2030年までの新たな国際目標を採択した。生態系の保全区域を「陸、海の少なくとも30%」に拡大することなどを盛り込んだ。

 COP15は20年に中国・昆明で開催予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期。議長国は中国のまま、条約事務局のあるモントリオールに開催地が変更された。

 新目標は、10年に名古屋市でのCOP10で決めた20年を期限とする「愛知目標」の後継。各国政府は目標実現に向けて、生態系保全の取り組みを進めることが求められる。

 新目標は23の個別目標で構成される。愛知目標で「陸の17%、海の10%」とすることを目指していた保全区域は大幅に拡大させる。また、生態系に悪影響を及ぼす外来種の新たな侵入・定着のペースを少なくとも半減させることを目指す。

 企業活動が生物多様性に与える影響について情報開示を促す目標も盛り込んだ。欧州連合(EU)や英国などは企業に開示を義務づけることを提案。日本などの反発で義務化は見送られたが、各国政府に30年までに情報開示を推進するような施策を実施するよう求めた。

 新目標を達成するための対策資金は世界全体で、30年までに官民で年2000億ドル(約27兆円)を確保する。先進国から途上国への資金支援を25年までに年200億ドル(約2兆7000億円)、30年までに年300億ドル(約4兆円)に増やすことを目指す。

 COP15では、「デジタル化された遺伝情報(DSI)」を使って得た利益を公平に配分する国際的な仕組みを作ることも合意した。DSIは植物や微生物といった生物の遺伝資源そのものではなく、解析したゲノム情報をデジタル化したものを指す。遺伝資源を医薬品などに利用して得られた利益を配分するルールは名古屋議定書(10年採択、14年発行)で定められているが、DSIは対象外で、取り扱いが争点になっていた。【岡田英】

 ◇国連生物多様性条約  1992年に採択された環境条約。同年採択の気候変動枠組み条約と合わせて「双子の条約」と呼ばれる。①多様な生物を生息する環境とともに守る②生態系の恵みを持続的に使う③遺伝資源が生みだした利益を公平に配分する――を目的に掲げる。締約国は196カ国・地域。米国はバイオ産業への影響を懸念し、批准していない。

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