いま産卵の時期を迎えている鮎がピンチ。 近年、ある被害が相次ぎ漁業関係者は対応に頭を抱えている。
川釣りの中でも人気を集める鮎釣り。 鳥取県内で鮎釣りができる期間は、6月からのおよそ4カ月と決まっていて、資源保護のため稚魚を放流するなど大切に管理されている。
しかし、今この鮎がピンチを迎えている。 水鳥カワウによる食害だ。
記者:「うわーすごいな、あんなでかい魚、すごい皆で一緒に咥えながら飲み込もうとしている。」
これは、静岡県で撮影されたカワウが魚を食べる瞬間をとらえた時の様子。 また、鳥取市の港でも魚を食べるカワウが、次々と水に潜っていた。1日におよそ500グラムの魚を食べるともいわれ、漁業関係者は頭を抱えている。
鳥取県東部を流れる千代川。 早朝、カワウの群れが現れ、鮎を狙っていた。
千代川漁業協同組合 寺﨑健一組合長:「カワウは共存できればいいんですけど、今そういう状態ではないので、組合員はまったくの敵と思っていると思います。」
鳥取県湯梨浜町の鳥取県栽培漁業協会。 およそ60万匹の鮎を飼育し、県内の河川に放流する鮎を漁協に提供している。
山本愛記者:「こちらが生まれて2週間ほどたった鮎の仔魚です。元気よく泳いでいるのが見えます。」
9月下旬から11月下旬にかけ産卵のピークを迎える鮎。1匹のメスが生む卵はおよそ3万個で、石と石の隙間に卵を産み付ける。 卵は、およそ2週間でふ化。 ふ化した仔魚は、海へ下りプランクトンなどを食べて、翌年の春、川に遡上する。
鳥取県栽培漁業センターでは、鮎の生育状況や数を調べ、不漁対策に活かす調査・研究も行っている。 今年は、鮎の数にある変化が見られたという。
鳥取県栽培漁業センター 増殖推進室 田中靖主任研究員:「今年は9年ぶりに県内河川の遡上量が増えましたし、例えば千代川、漁協組合員さんから中流、下流部を中心にとてもたくさんの鮎が釣れたと。いい年になったなと感想をよく聞きました。」
この日は、飼育している産卵間近の鮎を川に放し、産卵しているかを確認する試験が行われた。
鳥取県栽培漁業センター 増殖推進室 田中靖主任研究員:「実際に川に潜ってみると、一面鮎だらけという状況になっていまして、たくさんの鮎が親として良く残ったなと思っています。」
近年、海のエサが減少し、遡上する鮎が減っていたが、今年はエサが多く、鮎が育つ環境が整ったため、数が増えたと考えられている。
現在、産卵の時期を迎え、群れで行動している鮎。 群れでの行動を狙われ、秋から冬にかけて県外からも飛来してくるカワウの標的となっている。
千代川漁業協同組合では鮎を守ろうと、10m間隔で550mに渡って釣り糸をはり、毎日交代で様子を見るなど対策をとっている。 しかし… 鮎が食べられる被害は、止まらないという。
釣り糸を張っていない場所ではカワウは野放しとなり、対策が追い付いてないのが現状だという。
千代川漁業協同組合 寺﨑健一組合長:「花火による追い払いをしてるんですけど、追い払うだけで、またかえってきて、捕食するというようなことになっているので、なかなかこれはという対策が取れないのが残念なところです。」
鳥取県によると、県内のカワウ被害額は年間およそ3500万円。 ※2017年~2019年の調査に基づく
県は空気銃を使って毎年700羽のカワウを駆除するなどしているが、いたちごっこが続いているため、新たな対策を模索している。
鳥取県栽培漁業センター 増殖推進室 田中靖主任研究員:「鮎という魚は非常に魅力がありますので、観光資源としても十分活用できますし、何より昔から地元の人たちに根付いてきた魚でもありますので、何とかして守りたいですし、資源として有効に活用していけるようにしていきたいと思っています。」
来年以降の資源を維持するため、鮎の産地を守るために抜本的な対策が求められている。