カワウのアユ食害深刻 県外から次々飛来 対策追いつかず

 大量の魚を食べる“大飯食らい”の水鳥「カワウ」によるアユの被害が鳥取県内の漁業関係者を悩ませている。県や漁協などが、捕獲や追い払いなどの対策を強化するが、カワウに県境はなく、次々と県外から飛来。いたちごっこの状況が続く。アユ釣りなどで誘客を進める町にとっては死活問題。抜本的な対策が必要だが、現在の対策に代わる妙案はなく、行政は対応に苦慮している。

■常時500羽

 県は、カワウによるアユの被害を減らすため、2017年4月に飛来数や漁業被害の実態を調査して効果的な対策を実施するための指針を策定。県内で確認されているカワウは、年間平均で常時約500羽。秋から冬にかけて確認数が増えることから、県外から飛来していると考えられる。

 千代川漁業協同組合(鳥取市)は今月中旬、アユを守るために産卵場所に釣り糸を張り巡らせた“防空網”を設置した。担当者は「産卵がピークを迎えるこの時季はカワウが集まる」と指摘。親アユを目当てに集まるカワウの着水を防ぎ、来年以降の資源維持に努める狙いだ。

■いくら捕獲しても

 同漁協はこの他、狩猟者を2人雇い空気銃で駆除するほか、花火による追い払いなども実施。「昨年は約300羽を2人で駆除してくれた。ただ、いくら撃っても外から飛んでくる。アユが釣れないと遊漁証も売れない。何とかしてほしい」と行政へ対策を求める。

 年によっては、県内で700羽以上捕獲することもある。捕獲以外にも、県内のコロニー(繁殖地)にドライアイスを投入して、卵のふ化を止めるなど、対策は怠っていないが、県外からの“流入”によって対策が追いつかないのが実情だ。

■被害約3千万円

 県によると、アユの被害は年間約3千万円。琵琶湖(滋賀県)付近から飛来する例もあり「数百キロ離れた所からもやって来るので、どうしようもない」と頭を抱える。

 カワウの餌場となる河川の全てで対策することもできず、釣り糸による防空網も産卵場所など一部にしか設置することができない。県緑豊かな自然課の担当者は「今できる対策を継続して、少しでも被害を減らすしかない」とした。

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