■23年に法改正 飼育経験や食材活用 身近な沼や水路に生息しているアメリカザリガニを題材に、外来種の管理や生態を学ぶ取り組みが、茨城県つくば市茎崎地区の小中高校、地元住民、東京農大の3者で進められている。外来生物法の改正で2023年から野外への放流や販売が規制される見込みのアメリカザリガニ。3者は飼育経験や食材への活用を通じて、外来生物を人の手で管理する大切さを学ぶ考えだ。
▽予想外の味
8月下旬、同市高見原のカフェレストラン「バスティーユ」。ザリガニのスープとグラタンが運ばれてくると、甲殻類特有の豊かな香りが漂う。「あれ、おいしい」。口に運んだ子どもが思わず漏らした。
ザリガニ料理を味わったのは、同地区で開かれた「くきざきまちづくり大学」に参加した子どもと保護者。地元のまちおこし団体「くきざき地域創生会」が主催した。全4回のザリガニを題材にした催しで、同大の武田晃治教授による講義のほか、わなを手作りして市内の水路でザリガニを捕まえ、自宅に持ち帰って、餌で体色を青や黄色に変える実験を行った。残ったザリガニは2週間ほど泥を吐かせてから料理に使った。
参加した東洋大牛久高1年の松原琴乃さん(16)は「エビやカニの味に似て違和感なく食べられてびっくり。駆除してしまうなら、ありがたくおいしく食べたい」と話した。
▽まちおこしに
ザリガニを教材にした学習は昨夏から始まった。武田教授らの研究室と茎崎高、市立茎崎・高崎中、茎崎一・二・三小の6校をオンラインで結び、地域創生や外来生物について学ぶ講義を実施。希望者を募り、アメリカザリガニの体色を変える実験も行った。
昨秋、各校で子どもたちに茎崎地区のまちおこし案を募ったところ、実験会に参加した高校生から「ザリガニ食」の提案があった。実現を支援しようと、地区の住民がくきざき地域創生会を立ち上げた。
同会はザリガニ食を新たな地場産品にしようと取り組んでいる。会員で茎崎高教頭の関正貴さん(54)は「ザリガニが食べられるのだと伝えながら商品化の過程も見せ、まちづくりへの取り組み方を感じてほしい」と語る。
▽規制では不十分
アメリカザリガニは1927年、養殖用ウシガエルの餌として米国から持ち込まれた。当初は27匹だけだったが、養殖場から逃げたり、ペットとして飼っていた人が放流したりして、現在は全国に生息。アメリカザリガニが増えた沼やため池では、水草や水生昆虫、魚の減少・絶滅が報告されている。
環境省のホームページによると、アメリカザリガニは全国で約65万世帯、約540万個体が飼養されていると推計される。飼育に許可が必要な「特定外来生物」に指定すると、手続きを嫌った飼い主が遺棄する恐れがあるため、同省は2019年から従来とは異なる規制方法を検討してきた。
同省によると、改正外来生物法に基づく政令を定め、来年の春か夏には適用を始める。捕獲や飼育、無償譲渡は認める一方、販売や販売目的の飼育、輸入、自然に放つなどを禁止し、罰則規定も設ける予定だ。
専門家は規制だけでは不十分だと指摘する。武田教授は「外来種は人が持ち込んで増やした。駆除しなければいけない状況に至った理由を考える教育が大切」と強調。「昆虫食のように、環境負荷の少ない食材として活用したり、肥料に使えたりするかもしれない。栄養価に関する研究も進めたい」と話す。