多摩川に外来種の藻類が繁茂、一度侵入したら根絶は困難…アユ生育にも悪影響

 川の生態系に悪影響を与えることが懸念されている外来種の藻類「ミズワタクチビルケイソウ」が、今年も東京都青梅市の多摩川に繁茂していることを奥多摩漁業協同組合(青梅市)が確認した。河床に大量発生すると、餌となる藻類の成長が阻まれたアユが育たなくなる恐れもあるため、同組合が気をもんでいる。

 北米原産のミズワタクチビルケイソウが国内で初めて確認されたのは2006年。大分県の筑後川上流で見つかって以降、中部、甲信越、関東、東北に広がり、水産庁は今年3月、食塩水による釣り具の殺藻などを呼びかけた。

 多摩川でも青梅市が14年に確認。多摩川上流域に稚アユの放流を続けている同組合は、羽村堰(せき)(羽村市)以西の上流で発生具合を調べ始めた。その結果、18~20年には広域で発生したが、21年には減ったという。22年も大量発生はなかったものの、万年橋(青梅市)付近などで確認された。

 同組合の須崎隆・副組合長は「少量でも繁茂が見られる場所は、アユの定着率が悪い」と嘆く。さらに、水生昆虫の発生も抑えられてしまうといい、「虫を餌にするアユ以外の魚の成長に影響する恐れがある」という。

 一方で、ミズワタクチビルケイソウは夏には衰退することがわかっている。都環境科学研究所が多摩川を調査したところ、19年4~5月には河床一面を覆っていたが、6月には顕微鏡下でしか確認できなくなり、9~12月にはそれもなくなった。また、多摩川水系で繁茂が見られたのは上流のみで、中流と支流は顕微鏡下で確認できただけ。下流と小河内ダム(奥多摩町)は何もなかったという。

 調査した同研究所の石井裕一主任研究員によると、ミズワタクチビルケイソウが群体にならなかった中流域の拝島橋(昭島市)と比べ、増加が目立った上流域の和田橋(青梅市)の水温が5度以上低かった。水温が影響した可能性が高いという。

 もっとも、一度侵入した外来種の根絶は難しく、石井研究員は「生息域を拡大させないことが重要」と指摘。河川利用者に対し、川で使った靴や釣り具などを60度以上のお湯や漂白剤で洗浄することも勧めている。

 同組合では、小河内ダムの水を多摩川に放流する際に、水温が高い表面水を積極的に流してもらうよう、都水道局に働きかけていくという。

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