「そうそうそうそう、追い込んで追い込んで!入った入った入った!」 次々と網で捉えられる魚……この様子を撮影したのは、YouTubeで生き物に関する動画を投稿している“あらかわさん”だ。
「(この魚は)ゴールデンゼブラシクリッドと呼ばれる種類で、日本では観賞用として入ってきた。ショップでは、200~500円くらいで売られている。50~80匹くらい捕れた。川の中には、まだ1000匹以上残っていると思う」(あらかわさん)
撮影されたのは神奈川県の住宅街にある水路だが、この魚たちは本来アフリカに生息する熱帯魚だ。なぜ、気候が違う日本で繁殖してしまったのだろうか。
「高度処理水という温かい水が流れているので、冬を越すことはできると思う。簡単に言うと下水を温めて殺菌処理し、水路に流している。その水の温度が冬でも大体18~20度前後あるので、アフリカの生き物でも日本で生き延びることができる」(あらかわさん)
この動画について「日本で繁殖している例をほとんど聞いたことがなく、驚いている」と感想を語ったのが、野生生物に詳しい環境保全の専門家・久保田潤一氏だ。シクリッドの繁殖によって「在来種や周囲の環境に影響を与える可能性がある」と指摘する。
「(シクリッドの)特徴は、派手な色と子育ての仕方。口内保育(マウスブルーディング)といって、生んだ卵や稚魚をメスが口に入れて保護するので、産卵数は多くないが子どもたちがしっかりと育つ。また繁殖力がとても高い。雑食性で水草類や小さな魚、小動物も食べるので、捕食される生き物へ影響が出たり、同じような餌を利用している在来種が暮らす場所や餌を奪われたりする可能性がある」
観賞魚として飼っていたものを誰かが水路に放したことで繁殖したとみられるシクリッド。環境に影響を及ぼさないための予防策はあるのだろうか。久保田氏は次のように説明する。
「国が作っていく制度・法律も重要で、代表的なものとしては『外来生物法』がある。この特定外生物に指定されると、飼育ができなくなったり、放流することができなくなったりすることがある。ただ、たくさん飼育している人がいるので、いきなり飼育禁止になってしまうと慌ててみんなが外に逃がしてしまう。そうすると外来種問題が一気に悪化してしまう可能性があるので、『飼育は続けていいけど、放しちゃダメだよ』というような新しい枠組みで指定していく動きにも注目していくことが必要になる」(自然保護団体「NPO birth」久保田潤一氏)
基本的に冬を越せない個体ではあるものの、河川の水温は全体的に上昇傾向にあり、将来、日本中に広がってしまう恐れもあるという。ただ、新たな環境でも生存し繁殖していこうとする魚側に罪はなく、「人間側が生き物との向き合い方を考えるべきだ」と久保田氏は訴える。
「個人の取り組みとしては『放さないこと。最後まで飼うこと』(が大切である)。飼いきれなくなったときに、自分自身の手で処分する覚悟がなければ飼うことはできない。それを守っていけないと、どんどん規制が進んでしまう。(飼うのが)楽しい熱帯魚も、次々と特定外来生物に指定されたら、飼える生き物がいなくなってしまう。放された生き物によって日本の自然も壊滅的になってしまうので、『絶対にペットは放さない』ということを徹底してほしい」(自然保護団体「NPO birth」久保田潤一氏)
このニュースを受けて、自身で昆虫などを飼い、4年前から昆虫食を広める活動をしている看護師でタレントの荒川真衣氏は「シクリッドは、誰かがペットとして飼っていたものを放したことで繁殖したのだと思う。特に外来種は、飼う上での責任を重く受け止めなければならない」と主張した。
外来種に罪はない。飼い主だけではなく、売る側にも責任があるのではないか。荒川氏は次のように訴える。 「私も生き物が大好きで、ペットショップに行くと珍しい生き物を見つけることがある。しかし、情報が少なく、飼育方法を知らないという人もたくさんいると思う。『ペットショップに並んでいるから、安易に買ってしまった』という結末はよくあることなので、最後まで飼う責任も必要だけど、売る側もしっかりと考えて輸入しないといけないと思う」 (『ABEMAヒルズ』より)
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