北極振動が琵琶湖に影響 ミジンコ成長と周期性一致 滋賀県立大など

 北極域の気候が琵琶湖のミジンコに影響している――。滋賀県立大環境科学部の伴修平教授と劉鑫(りゅうきん)特任研究員が滋賀県水産試験場などとの共同研究で、「北極振動」という気象現象が琵琶湖の動物プランクトン成長・増加量に関連していることを突き止めた。滋賀県立大が発表した。同様の現象は欧州でも確認されているが、極東アジアでは初めてという。琵琶湖の生態系は地球規模の気象の影響も受けていることが裏付けられた。【庭田学】

 北極振動は、北極周辺の気圧が高くなったり低くなったりし、逆に中緯度地域の気圧が低くなったり高くなったりする現象。気圧の変動によって、北極圏の冷たい空気が放出されたり滞留したりするので、日本など中緯度地域の天候を左右する。

 伴教授らは、県水産試験場が保存している過去40年間の動物プランクトン「ヤマトヒゲナガケンミジンコ」の標本を分析した。ミジンコの餌量、成長速度、増加量が1971~2010年に約10年周期を示すことを発見。その周期的変動が、北極振動の周期と極めてよく一致した。

 北極圏の気圧が平年より低くなる「正の北極振動」の場合、日本付近の気温は平年より高くなるとされる。伴教授は「正の北極振動に伴って降水量が増えるのかもしれない。雨が増えると、琵琶湖に流入する有機物の増加に伴い、バクテリアが増え、動物プランクトンの餌となる原生動物も増える。その結果、動物プランクトンの増加速度が速くなるのではないか」と推測している。今回の研究では、動物プランクトンの周期性と北極振動の周期性との関係が、1990年以降に弱くなっていることも判明した。伴教授らは「地球温暖化の影響で85年以降、琵琶湖の平均水温が約1度上昇したことが原因とみられる」としている。

 劉特任研究員によると、北極振動に類似した大気変動「北大西洋振動」が、ドイツなど欧州の湖や北大西洋の植物プランクトン、動物プランクトンに影響を与えていることが分かっているという。

 伴教授は「動物プランクトンの成長は季節的な短い周期で変動するものなので、長周期の変動が判明したことは興味深い。生態系の保全・修復のためには、人間がコントロールできない地球規模の影響を考慮する必要があることを示唆している」と話している。

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