琵琶湖の厄介者は人気者…堆肥化したらご当地作物に驚きの効果

 琵琶湖で生態系に悪影響を与える水草を発酵させた堆肥(たいひ)が滋賀県長浜市の建設会社によって商品化され、全国のご当地作物に活用されている。これまでに小豆島(香川県)のオリーブや淡路島(兵庫県)のタマネギなどに利用され、評判は上々という。(藤井浩)

 琵琶湖の水草は1994年の大渇水を機に増え、琵琶湖大橋から南側で毎夏、大量に発生している。固有種の魚介類のすみかを奪い、漁船のスクリューに絡まり、悪臭を放つなど弊害が多く、県は毎年5000~6000トンを刈り取っている。

 こうした現状に目をつけたのが長浜市の明豊建設だ。

 建設以外の新規事業への参入を模索する中、琵琶湖の環境改善につながる水草の堆肥化は「公共工事で世話になる県や県民への恩返しになる」として、開発に乗り出すことを決めた。

 2016年度に県の技術開発支援事業に手を挙げ、4年間で計約1100万円の補助を受けて研究をスタート。知り合いの企業から堆肥化技術の提供を受けて試行錯誤を繰り返し、19年に「湖(こ)の恵(めぐみ)」として商品化することに成功した。

 県では元々、刈り取った水草を2年間自然発酵させ、堆肥として無償で希望者に配布してきたが、「湖の恵」の場合は、発酵期間が2か月程度と大幅に短縮。さらに様々な菌の作用によって、専門機関の分析では病原菌を寄せ付けない効果や作物の成長、土壌改良を促す効果が実証されたという。

 瀬戸内海に浮かぶ小豆島でオリーブを生産加工する「東洋オリーブ」では、かつて炭疽(たんそ)菌がはびこり、オリーブが全滅していた一角に「湖の恵」を使用。カビの発生が減り、年間最大3トン余りを収穫できるようになった。同社農園部の亘秀樹さん(47)は「10年以上農薬をまき続けても効果はなかったのに」と驚く。

 淡路島でタマネギやキャベツなどに利用している畑田農場代表の堀井隆善さん(46)も「細かな世話をしなくても自力で元気に育つ」と話す。

 このほか徳島県のサツマイモの一種「鳴門金時」や、長野県のレタス、沖縄県のマンゴーなどに活用実績があるという。

 明豊建設によると、価格が一般的な肥料より高いことなどが課題だが、有機栽培で琵琶湖の環境改善を目指す県内のプロジェクトに参画するなどしてPRを強めていく方針だ。同社の白石昌之・企画営業部長(52)は「農家が喜ぶ姿を見るとやりがいを感じる。さらに販路を広げたい」と話した。

+Yahoo!ニュース-経済-読売新聞オンライン