台風上陸せず好天続き、下がり続ける琵琶湖の水位…取水制限なら生活・産業に影響も

 琵琶湖の水位が秋以降、下がり続けている。台風が上陸せず、好天が続いたことが原因で、18日の水位は基準のマイナス65センチと、2007年以来、14年ぶりの低さだ。滋賀県によると、同90センチ程度まで低下すると県内外の流域府県に取水制限を要請する可能性があり、近畿一円の暮らしや産業に影響が出るおそれがある。

1日1センチずつ低下

 滋賀県の三日月大造知事は16日の記者会見で、琵琶湖の水位低下について「必要なら下流の府県も含め取水制限や節水を呼びかけないといけない」と述べ、危機感をにじませた。

 琵琶湖は淀川水系の京都、大阪、兵庫、滋賀の4府県約1450万人の生活と産業を支えている。

 琵琶湖の水位は浸水被害防止のため、国土交通省琵琶湖河川事務所が、琵琶湖から中下流部に唯一流出する瀬田川の洗堰(あらいぜき)(大津市)の放流量を操作して調節。梅雨や台風シーズンの毎年6月16日~10月15日はマイナス20~30センチに下げている。

 ところが今年は9月中旬以降、台風が上陸せず、好天も続き、彦根地方気象台によると、11月17日までの2か月間の降水量は大津市で平年の約4割、県北部の彦根市で約3割だった。

 このため水位は11月1日以降、ほぼ毎日約1センチずつ低くなり、8日に07年以来のマイナス60センチ台に達した。

 年内の今後の降水量について同気象台は平年並みか平年より少ないと予測する。

 県はマイナス75センチで「渇水対策本部」を置き、節水呼びかけなどを強化する。

 直近で同本部が置かれたのは05年で県によると定置網で魚が死んだり、消防がポンプで湖水をくみあげられなくなったりしたという。

 同90センチを下回れば国や県はほかの流域府県などと取水制限を協議する方針だ。

 琵琶湖の史上最低水位は1994年のマイナス123センチ。直近の取水制限は02年9月~翌03年1月に実施され、京都、大阪、兵庫3府県は上水道や工業、農業用水の取水が10%、滋賀県で5%制限された。

湖魚の産卵困難

 地元の観光や漁業への影響も懸念される。

 琵琶湖汽船(大津市)が湖内で運航する観光船は、船の乗降口が桟橋より約60センチも低くなり、乗客は傾いた板の上を歩かざるを得ない状況だ。同社は「これ以上、水位が低くなれば運休もやむを得ない」と明かす。

 郷土料理「鮒(ふな)寿司」に使う固有種ニゴロブナなどが減少するおそれがある。

 県立琵琶湖博物館(草津市)の米田一紀・主任技師は「湖岸のヨシや柳の根などが干上がれば、固有種のニゴロブナやホンモロコが春に産卵できなくなる」と指摘する。

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