奄美のノネコ捕獲苦戦、本年度まだ11匹 環境省、わな誘導の決定打なく〈リスタート世界遺産へ〉

 世界自然遺産登録を目指す奄美大島で環境省が2018年度から実施している野生化した猫(ノネコ)の捕獲が本年度は9月末現在、11匹にとどまっている。わなに誘い込む効果的な手法が確立できていないためだ。ノネコを減らすには、避妊去勢など飼い主の管理も欠かせず、捕獲と発生源対策を同時並行で有効に進められるかが課題となる。


 奄美大島の山中には600〜1200匹のノネコが生息しているとされ、捕獲はアマミノクロウサギやアマミトゲネズミなど絶滅危惧種の保護が目的。
 18年5月に自然遺産の「登録延期」を勧告した国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関は、希少動物を捕食するノネコなどの外来種対策を課題に挙げた。
 捕獲数は1年目78匹、2年目97匹。譲渡先が見つからず安楽死に至ったケースはない。
 捕獲エリアは徐々に広がり、9月末現在で島の森林面積の約6分の1に当たる100平方キロメートルに450基のわなを設置している。その効果は数字に表れておらず、環境省も伸び悩みを認める。
 雌の尿を染み込ませた布や鳴き声を出すボイスレコーダーの設置、えさの変更と試行錯誤を重ねるが、どれも有効性が確認できていない。わなを警戒して近づかないノネコもカメラに写っていた。
 同省は16日、27年度までのノネコの管理計画のロードマップ(工程表)を公表。23年度に捕獲エリアを島内の森林全域に広げる方針を示した。事業開始当初は全域で捕獲した場合の目標数を月30匹、年300〜360匹としていたが、工程表に具体的な捕獲数は盛り込まなかった。後藤雅文・離島希少種保全専門官は「捕獲数だけでノネコの増減は判断できない」と説明する。
 一方、奄美大島5市町村は屋外で飼う猫の避妊去勢や個体識別用のマイクロチップ装着を義務付けた罰則付きの条例を18年1月に施行し、ノネコの発生源対策を強化している。これまで捕獲した約2割が不妊手術を受けた野良猫で、人間の生活圏から山中に入り込んでいることが明らかになっている。
 10月1日時点で避妊去勢率61.9%、チップ装着率は38.5%。上昇しているものの、自治体間で取り組みに温度差がある。環境省は希少種が生息する山林近くなど市街地以外でのチップ装着率を27年までに90〜100%にする目標を掲げる。
 奄美大島ねこ対策協議会の平田博行会長は「条例制定前から飼われていた猫ほど避妊去勢、チップ装着ができていないケースが多い。自治体間の足並みをそろえ、適正飼育を徹底していきたい」と話した。
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