松山市の閑静な住宅街を流れる吉藤川に、今年春、クレソンが繁茂しているのを見つけた。肉料理の付け合わせなどで活躍する野菜だ。調べてみると、他の地域でも、農地以外の場所で野生化し、繁殖しているという。独特の香りと、ピリッとした辛味がおいしい野菜が、なぜ?
クレソンはアブラナ科の多年草で、欧州、中央アジア原産。オランダガラシとも呼ぶ。日本へ1870年ごろに渡来。水田や川などの水辺から水中に群生する。環境省によると、食用に利用されたり、水質浄化のため導入されたりしてきた。
一方、国はクレソンを「重点対策外来種」に位置付ける。同省は「駆除の必要性が高い」(外来生物対策室)とする。用水路で繁殖したら、通水を妨げる恐れがあり農業被害につながる可能性があるからだ。詳しい分布は把握していないが、全国に分布しているとした。農水省農村環境対策室は特段、防除の呼びかけはしていないという。
繁殖力強く川で野生化
千葉県野田市によると、利根川や江戸川の河道近くに群生しているとみられる。香川県は県内各地のため池や河川、水路で繁茂を確認。1965年には、現在の三豊市で採集した記録がある。在来植物との競合などの可能性があるため、「侵略的外来種リスト」に記載している。
愛媛県内の自治体への取材によると、今年春までに同市の吉藤川の他、八幡浜市を流れる千丈川などで野生化したクレソンの繁茂を確認した。ただ、吉藤川では「梅雨前に枯れた」(同県中予地方局)といい、記者は8月下旬に松山市、八幡浜市、伊方町で探したが、発見できなかった。
流出対策取れば「栽培問題ない」
松山東雲短期大学の松井宏光名誉教授は、クレソンの強い繁殖力を踏まえ、来年以降も愛媛県内の各地で繁茂する可能性を指摘する。ちぎれた茎から根が出て再生するほど繁殖力が強く、駆除はできるだけ根ごと抜き取る必要があるという。
昭和10年代から県内で野生化。流出源は、①栽培していたものが流れ出た②種子を鳥が運んだ――ことが考えられるが、特定はできない。生活排水や農地からの肥料分の流入による栄養で、繁茂するようになったという。在来植物の生育や魚類の移動の阻害など生態系被害も懸念する。
クレソンは外来種だが、栽培されて食卓を彩る。松井名誉教授は、水路にネットを張るなどして、流出対策を取れば「問題なく栽培できる」と話す。
(佐野太一)
