琵琶湖博物館(滋賀県草津市)は27日、長くアマゴと同種とされてきたビワマスが新種であることが判明した、と発表した。同館や京都大などの研究グループが近縁種との違いを明らかにし、学名を「オンコリンカス・ビワエンシス(琵琶湖で取れるサケ属の魚)」とした。
ビワマスはサケ科の淡水魚で、成長すると体長が50〜60センチになる。1925年に米国の研究者により「オンコリンカス・ロヅラス」の学名が付けられ、アマゴと同種の魚と見なされるようになった。しかし、70年代以降の研究でアマゴとビワマスの違いが見いだされるようになった。90年には「ロヅラス」がビワマスではないことを研究者が解明し、ビワマスは学名がない魚となった。
グループはビワマスを分析し、目の形や特定の部位のうろこの枚数など複数の形質を近縁種のアマゴやヤマメと比較。明確に違いがあることが分かったため、琵琶湖固有の新種として琵琶湖の名を冠した学名を付与した。研究成果をまとめた論文が21日付で国際学術誌に掲載された。
ビワマスは環境省のレッドリストで準絶滅危惧種に分類され、河川改修で産卵場所が減ったり、近縁種との交雑が進んだりする可能性があるという。グループは新種認定によって、保全活動がこれまで以上に進むことを期待している。
研究は2009年に始まった。琵琶湖博物館の藤岡康弘特別研究員が著書でビワマスに学名がないことを書いたところ、今回の共同研究者の一人である京都大の中坊徹次名誉教授が「学名を付ける研究をしよう」と提案したという。藤岡特別研究員は「15年来の研究成果が実り、肩の荷が降りた。これで『琵琶湖の固有種』とはっきり言えるようになった」と話した。
同館では新種であることを確かめるために用いた標本を、7月19日〜9月28日に館内で展示する。