龍郷町は国の緊急しゅんせつ推進事業を活用し、浦の橋立とおしめ地区で調整池に堆積(たいせき)した土砂を除去する工事を進めている。工期は今年度(2024年度)までで調整池の機能回復が図られるが、外来種のモクマオウなどの樹木とともに除去されたマングローブについては苗が育っており、今年度中にも移植に取り組む。
同事業は10年の奄美豪雨、翌年の奄美北部豪雨で浦地区は土砂崩れだけでなく、河川の氾濫で浸水被害が発生したことから、早期の防止策を求める住民の要望もあり、対策として調整池本来の機能を回復させ、貯水能力の向上を図ることになった。
町農林水産課によると、町単事業では財政負担が大きいため、国の事業の活用を目指したところ採択された。事業では20~24年度に地方団体が単独事業として行う緊急的な河川等のしゅんせつ経費について地方債の発行を可能とするための特例措置(地方財政措置=充当率100%、元利償還金に対する交付税措置率70%)を講じている。龍郷町の同地区での事業費は1億円余り。
2か所ある水路のしゅんせつ工事から開始。現在は池(約1万平方㍍)に堆積した土砂を重機で除去しており、50~60㌢の深さで掘り下げているという。しゅんせつ工事に加えて進められたのが希少種の移植に向けた取り組み。マングローブを形成するオヒルギとメヒルギで、成木についてはカイガラムシ(害虫)の一種による被害が確認されたことから、種子から育てた苗を移植するすることになった。
業者により奄美市笠利町の民間施設で植栽作業が進められ、50~60㌢まで育っているという。移植に向けて測量も行われており、海側の浦の橋立部分ととおしめ公園側の2か所に、それぞれ150㍍にわたって200本ずつ苗を植える。今年度から新年度にかけて予定している。同課は「しゅんせつ工事により調整池の機能が回復することで住民の安全が守られる。また、再びマングローブを移植することで、マングローブの環境浄化機能などが発揮されるのではないか」としている。