「クマが東京23区内に現れる日も遠くない」アライグマやハクビシンまで都会に出没する理由

「人がクマに襲われた」というニュースが頻繁に流れてくるようになった。なぜ害獣は増え続けるのか?今回は害獣と人間がせめぎ合う最前線を訪ねた。

なぜ害獣は増え続けるのか

 日本の4大害獣と呼ばれるクマ、シカ、イノシシ、ニホンザル。これらの動物を筆頭に獣害が多発している。害獣に詳しい森林ジャーナリストの田中淳夫氏に話を聞いた。

「ツキノワグマもヒグマも、推定生息数は30年前の10倍近く増えたという調査結果がある。生息数が増えれば、自らの行動圏を広げようと人里に下りてくる。人間馴れしていないクマが人と遭遇することでパニックを起こし、襲いかかることもあります」

「動物が増えたということは、餌が増えたということ」

 環境省のデータによると’23年の4~9月には4305頭のクマ類が捕獲された。’22年度の総数が3886頭だったのに、わずか半年でその数を上回っている。

「動物が増えたということは、餌が増えたということ。仮に出産数が増えても、餌がなければ生き残れませんから」と田中氏は主張する。そしてその餌を与えているのが人間という側面も否めない。

「農作物を収穫せずに放置している人たちがいる。収入を得るためでなく趣味程度で作っている人であれば、サルやイノシシが食べにこようが追い払おうともしない。そうなると、動物たちも“自分は追い払われない存在”と学習し、おいしいものがたくさんある人里に進出します」

クマが東京23区内に出没する日も遠くはない!?

 主な獣害には農作物被害のほか、人的被害、生態系被害、感染被害などが挙げられる。先に挙げた害獣以外にも、アライグマ、ハクビシン、ヌートリア、ニホンカモシカ、マングース、ハシブトガラスなどによる民家侵入や在来種圧迫も深刻だ。

「動物は餌を求めて人里に入り、人間はそれらを駆除する。これは今に始まったことではありません。日本は人口減少で農山村が衰退したことで、動物の警戒心が薄れてきた。クマが東京23区内に出没する日もそう遠くはないでしょう」

 都心でも、公園や川辺など動物が生息できる場所はいくらでもある。では我々に害獣を食い止める術はあるのか。

「駆除と防護はもちろん、それ以上に重要なのが予防です。そもそも“人里に来る価値がない”と動物たちに教えなくてはいけない。まずは餌となるものを捨てず、害獣を呼び寄せないことが第一歩です」

 害獣対人間の戦いはこれからが本番なのかもしれない。

まだまだいる!あなたの隣の害獣たち

①アライグマ
 全長約60~100㎝で北米原産の特定外来生物。1970年代に放映されたテレビアニメ『あらいぐまラスカル』の影響で輸入されるも、人に懐かず凶暴でペットには不向きと判明し野に放すケースが続出した。雑食性のため、農作物や家畜飼料などを食い荒らす

②ニホンカモシカ
 全長約100㎝で、名前にシカとつくがウシ科に属する。一時は絶滅寸前だったが、特別天然記念物認定以降は数が回復。本州・四国・九州の山地丘陵地帯に生息する。攻撃性の高い動物ではないが食べられる植物の数が多く、ヒノキなど植林した苗の食害が多発

③ヌートリア
 南アメリカ原産で全長70㎝以上の巨大ネズミ。もともと軍服用の毛皮目的や戦後の毛皮ブームで輸入されるも、逃げ出すなどして野生化した。爆発的な繁殖力で水辺付近に生息し巣穴をつくり、堤防破壊など水害を引き起こす。雑食性で農作物なども狙う

④ハクビシン
 全長約90~110㎝で鼻筋の白い線が特徴の南方系動物。日本では1943年に静岡県で捕獲されたのを機に、南東北から中部や四国、さらには都心部へと分布域を拡大する。木登りが得意で果樹を取るなど農作物被害のほか、人家の天井裏に棲みつくこともある

⑤ハシブトガラス
 全長約52㎝でくちばしが太いのが特徴。国内に生息する数種類のカラスのうち最も多く、全国の市街地や山地など、どこでも見られる。家畜や家禽、4~7月の繁殖期には攻撃的になり人間を襲撃することも。都心部では人間の捨てたゴミを食い荒らす

⑥マングース
 全長約55~75㎝でイタチのような体形。沖縄や奄美諸島に生息する。1910年に東南アジアからハブなどの駆除目的に移入するも、その役目をほとんど果たすことなく野に放たれ増殖。ヤンバルクイナやアマミノクロウサギなど絶滅危惧種を襲うことで生態系を壊す

【森林ジャーナリスト・田中淳夫氏】
静岡大学農学部林学科卒業後、出版社などを経てフリーの森林ジャーナリストに。著書に『獣害列島』(イースト・プレス)がある

取材・文/週刊SPA!編集部 写真/ニホンザル:田中淳夫氏提供、その他:Adobe Stock

―[新時代突入![害獣VS人間]]―

+Yahoo!ニュース-国内-週刊SPA!