カマキリはなぜ、苦手な水に飛び込むのか 理研などのチームが長年の謎を解明、鍵は寄生する「ハリガネムシの遺伝子」

 カマキリが池や川などに飛び込む奇妙な現象について、寄生昆虫のハリガネムシの遺伝子がカマキリの行動を操作する仕組みを、理化学研究所(理研)などが明らかにした。遺伝子が親から子ではなく、異なる個体に伝わる「水平伝播(でんぱ)」のメカニズム解明につながる発見だという。(津谷治英)

 類線系動物のハリガネムシは名の通り、針金のように細長く、成虫の体長は約20~40センチ。幼生時はカゲロウなど水生昆虫の幼虫に寄生し、その昆虫が羽化して陸地に上がると、カマキリなどが捕食して寄生先が移り、その体内で成長する。

 一方、水中では生活しないカマキリの一部が、川や池に飛び込む行動は長年、謎となっていた。水中で排せつ腔付近からハリガネムシが出てくる不思議な現象も知られていたが、理由はよく分かっていなかった。

 研究チームが双方の遺伝子を解析したところ、似た配列の遺伝子が1342あることを確認。進化の過程でカマキリの遺伝子がハリガネムシの遺伝子に組み込まれたとみられ、その遺伝子がカマキリの中で活発に働き、水に向かわせる行動をとらせている可能性があるという。

 遺伝子の移動は親から子へ受け継がれる「垂直伝播」が一般的。異なる個体に伝わる水平伝播は細菌などの単細胞生物では知られるが、多細胞生物では珍しい。

 発表会見では、カマキリからハリガネムシが出てくる瞬間を公開。理研の三品(みしな)達平客員研究員は「カマキリが川や池に飛び込む仕組みの一端が分かった。遺伝子水平伝播の研究モデルになる」と話している。

 研究成果は米科学誌にも掲載された。

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