サワガニ、塩水でも生存可 海流に乗り分布拡大か 信州大チーム

 日本の固有種で、国内の広い地域に生息するサワガニの中には、海流に乗って九州から本州に分布を広げたと考えられるグループがあるとの研究成果を、信州大などの研究チームが発表した。一生を淡水で過ごすと考えられてきたが、実験で塩水でも生きられることが確認できたという。

 サワガニは渓流や水田などの淡水に生息し、同一種でも茶や黒、赤や青白い色など地域によって殻の色が異なる。四国や本州東部では異なる色の個体が混ざって生息している場所もあるため、色と遺伝子系統は関係がないとされている。

 チームの竹中将起(まさき)・信州大特任助教(進化生物学)らは国内各地に分布するサワガニの進化の過程を調べるため、国内126地点で268匹を採取し、遺伝子解析をした。

 その結果、日本のサワガニの祖先は琉球列島などの南西地域を起源とすると考えられた。現在国内にいるサワガニには10の遺伝系統があり、北上して分布を広げながら遺伝的に分化した可能性が高いという。

 10の系統のうち、伊豆半島や三浦半島、房総半島に生息する系統は、距離的に近い関東地方の他の地域のサワガニよりも、屋久島や九州に生息する系統に遺伝的に最も近かった。九州のサワガニの中には陸伝いで北上したグループだけでなく、黒潮に乗って本州に流れ着き「飛び地」的に分布を広げたグループがいたと考えられるという。

 さらにサワガニが海を渡れるかを確かめるため、海水と同じ濃度の塩水で飼育したところ、長野県内で採取した全14匹、伊豆半島で採取した9匹中6匹が2週間以上生存し、中には1カ月生存した個体もいた。

 竹中さんは「図鑑や学術論文によってはサワガニは海水では生きられないと書かれていることもあり、実験結果に驚いた。陸と海の2ルートで分散する現象は珍しく、生物多様性を考える上でも貴重な成果だ」と話す。

 研究結果は国際学術誌「ズーロジー」電子版(https://doi.org/10.1016/j.zool.2023.126118)に掲載された。【田中韻】

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