“かかし”に、ドローンで巣にドライアイスを投入して卵を凍結 アユの捕食被害が深刻化 「カワウ」退治の対策あれこれ

宮崎県内で漁が盛んなアユの、捕食被害についてです。

 五ヶ瀬川漁協でのアユの漁獲量の推移です。 およそ20年前、2002年には9トンを超えていた時期もありましたが、それ以降、減少傾向で、去年は2トンとなっています。

 アユの漁獲量が減っている原因のひとつで、今、関係者を悩ませているのが、「カワウ」という野鳥による捕食被害です。

 全国で対策に苦慮する中、県内で、新たな取り組みも始まっています。

■1日あたり500グラムの魚を捕食するカワウ

 アユ漁の名所となっている県内。近年、ある生物が漁業関係者の頭を悩ませている。 それがアユを捕食する野鳥、カワウだ。 体長が80センチほどあり潜水が得意なカワウは全国に分布していて、1日あたり500グラムの魚を捕食するといわれている。

 19日、宮崎市で開かれた講演会。 テーマは、「宮崎県で今やるべきアユ資源管理とカワウ対策」だ。

 参加した県内各地の漁協関係者は・・・

(漁協関係者) 「もうカワウは大変です、何とかして駆除しないと川がもうダメになります。本当に多い」 「もうすごいですよ。前はそんなになかったんですけど、ここ5、6年くらいから(カワウ)被害がひどくなっています」 「今のところ、対策という対策は・・・放流場所を変えるとか、そういうことでもう難儀しています」

■「藁にもすがる思い」かかしを河原に設置

 おととしは、全国で93億円に上ったと推定されているカワウによる被害。 対策の1つが駆除で、県内水面漁連によると、県内の河川での駆除数は2016年から2019年にかけて300羽から400羽だったが、2020年には723羽まで増加。昨年度は819羽と過去最多になった。

 こうした中、五ヶ瀬川漁協で去年から始めたのが・・・

(五ヶ瀬川漁協 吉本祐一組合長) 「いま、4体ですかね、できているのは。残りは各理事とかが持って行って、いつでも立てられるようにしています」

 こちらでは、去年、10体ほどのかかしを河原に設置した。

 五ヶ瀬川漁協では、2002年におよそ9.3トンあったアユの漁獲量が、去年は2トンにまで減少。 今年もカワウが増える今月下旬からかかしを設置することにしていて、途中、入れ替えも行う予定だ。

(五ヶ瀬川漁協 吉本祐一組合長) 「藁にもすがる思いというか。特に最初のうちは警戒して近づかない。ただ、慣れてくると、どうしても効果が少なくなる」

■ドローンで巣にドライアイス投入 卵を凍らせてふ化させない

 難しいカワウ対策。 先進的な取り組みも始まっている。延岡市の祝子川漁協の江上敬司郎組合長の案内で向かったのは五ヶ瀬川河口。

(祝子川漁協 江上敬司郎組合長) 「あそこ、カワウやね。まだ何羽がおるのかな」

 ここで、今年5月、ある対策が行われた。

(祝子川漁協 江上敬司郎組合長) 「こっからドローンでドライアイスを(巣)に落として、(卵)を凍らせてカワウ退治をした」

 これは、県から委託を受けた県内水面振興センターがおととしから実施しているもので、ドローンを使ってカワウの巣にドライアイスを投入。卵を凍らせてふ化させないようにし、宮崎で生まれるカワウをなるべく増やさないようにしている。

■専門家 「一斉追い払い」県全体で取り組むことが重要

 カワウ対策の第一人者で、19日、漁業関係者を前に講演した水産技術研究所の坪井潤一主任研究員は、まず、県内のカワウ被害の現状をつかんだ上で、県全体で取り組むことが重要だと話す。

(水産技術研究所 坪井潤一主任研究員) 「足並みをそろえる上でも『みんなで頑張っていこう』みたいな雰囲気がないと、やっぱり対策をしてないところにだけカワウが行ってしまうふうになると、それはそれで問題なので、『一斉追い払い』というのがどうかなと思って提案させていただきました。来年にでも始めていただければなと思って期待しているところです」

あの手この手のカワウ対策。しばらく試行錯誤が続きそうだ。

※MRTテレビ「Check!」9月22日(金)放送 「Check!調査班」から

+Yahoo!ニュース-地域-MRT宮崎放送