「釣り人が柵を越えて入ってくるように…」 ブラックバス勝手に放流→ルール無視横行の異常

 群馬県みなかみ町内の農業用ため池で、外来種のブラックバスが勝手に放流され、釣り禁止の池に釣り人が柵を越えて入ってくると、ツイッター(X)で投稿があった。

 投稿者のNPO法人「生態工房」(東京都武蔵野市)では、地元の承諾を得て、池の水を抜いて外来種を駆除する「かいぼり」を行うことを明らかにした。工房の担当者に、被害の状況を聞いた。

■ブラックバスの大好物ザリガニと「セット放流」している?

 池の表層近くで、大きなオオクチバス(ブラックバス)が群れをなして泳いでいる。

 「ため池にオオクチバスを放流されてから、釣り人が柵を越えて入ってくるようになった」。生態工房の佐藤方博(まさひろ)事務局長は2023年9月18日、自らのツイッターでこう嘆いた。

 投稿によると、地元の農家は以前、かいぼりでバスを駆除した。しかし、うまくいかなかったようで、工房が再びかいぼりを行うよう提案すると、受け入れられた。佐藤事務局長は、地元と一緒に外来種駆除の成功体験をつくりたいとつづっている。

 工房のブログによると、みなかみ町には、ため池が50か所ほどあり、ブラックバスはその半数以上に生息している。在来種が駆逐され、池の生物多様性が失われているとして、工房では、こうしたため池のかいぼりを順次進めていく予定だ。

 バスの生息が広がった背景として、佐藤事務局長は19日、J-CASTニュースの取材にこんな見方を示した。

「実は、山の奥にため池があるにもかかわらず、ブラックバスと一緒にアメリカザリガニも生息しているんです。バスがいないと、ザリガニもいないんですね。バスは、小魚を食べ尽くすので、バスが食べるエサが必要になります。そこで、ザリガニやブルーギルとの『セット放流』がよく言われました。ザリガニは、バスの大好物ですので、根拠はありませんが、わざわざ一緒に放流した可能性もあると思います」

「釣り禁止の看板もあり、マナー違反というよりルール無視」

 放流目的などでブラックバスを運搬することは、外来生物法違反となり、重い刑事罰が科される。佐藤事務局長は、みなかみ町は利根川の源流域のため、バスがその水系に拡散する危険性も指摘した。

「釣り禁止の看板が立っており、農業設備として柵も設置されています。そこに入るのは、マナー違反というよりもルール無視ですね。車に乗って山の奥まで来て、細い道に車を止めて池に入ってくるわけです。不法侵入になりますが、農家の方に聞いたところ、釣り人を追い出すまではしないものの、苦々しく思っているそうです。池には、かいぼり実施のお知らせを出し、防犯カメラのようなものを置くなど、釣りができなくなるような提案もしたいと思っています」

 生態工房は、東京都立井の頭恩賜公園内の「井の頭池」で13~17年度に3回にわたって、かいぼりを行った実績がある。井の頭池は、その後に水質改善も進み、「まるでモネの名画のよう」とツイッターに写真や動画が次々に投稿されて話題になった。これをきっかけに、かいぼりの依頼が全国から相次いでいる。

 みなかみ町は2月、日本自然保護協会、三菱地所と連携協定を結び、生物多様性を回復させる取り組み「ネイチャーポジティブ」を始めた。三菱地所からは、10年間で計6億円の企業版ふるさと納税の寄付を受けることになっている。ため池のかいぼりは、その取り組みの1つで、実績のある工房が自然保護協会から誘いを受けて、池の再生に乗り出すことになった。

 工房では8月、地元で行われたため池改修工事の説明会に合わせ、工事に先立って外来種を駆除するかいぼりの説明を行った。みなかみ町の企画課では9月19日、取材に対し、10月14日に町内のため池1か所でかいぼりを初めて実施し、以降は年に3、4か所を目安に行いたい考えを示した。

 釣り人に対しては、「ブラックバスなどは繁殖力が強く、在来種を食べてしまうので、放流することは控えてほしい。崩れないようコンクリートの護岸になっており、落ちるとはい上がれない構造で、とても危険なので池に立ち入らないで」と呼びかけている。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)

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