外来植物「メリケントキンソウ」が沖縄本島で広がる 鋭いとげでけが 県外でグラウンドや公園が使えなくなる例も

 外来植物「メリケントキンソウ」が近年、沖縄本島各地に分布を拡大している。果実に鋭いとげがあり、県外では人やペットの皮膚に刺さるなどの被害が出ている。昨年ごろから本島でも相次いで確認されるようになり、各地に点在しているとみられる。とげによる負傷の恐れに加え、在来植物や生態系への影響も懸念されることから、関係者は「分布を広げないためにも、早急な取り組みが必要だ」と警鐘を鳴らしている。

 メリケントキンソウは南アメリカ原産でキク科の一年草。ニンジンの葉のような見た目で地をはうように生え、5月前後の時期に2ミリ程度のとげのある実を付ける。県外では公園やグラウンド、道ばたなどで繁殖している。全国の自治体が冊子を作成して注意を呼び掛けているほか、鹿児島県は指定外来動植物として野外での植栽を禁止するなど厳しく規制している。

 県内でも中南部の公園や観光施設に加え、北部地域でも繁殖が確認された。とげが靴底に刺さることで、意図せずに種子が遠方に運ばれて分布が広がる恐れもある。

 那覇市立森の家みんみんを拠点に活動する沖縄自然環境ファンクラブの藤井晴彦代表は「県外ではグラウンドが使えなくなったり、除去のため公園の利用を禁止したりした例がある」と指摘。「繁殖が県内全域に広がる前に、県や自治体と連携した防除体制を取らないと大変なことになる」と険しい表情を見せる。  同クラブは21日、那覇市の新都心公園で「撲滅作戦」を開き、市民ら約10人が参加した。県道251号寄りの公園南側では遊歩道の脇のほか、子どもが遊ぶ芝生エリアでも繁殖を確認することができ、分布拡大によるけがの発生が懸念された。

 本島北部、やんばる森のネイチャーガイドを務める上開地(かみがいち)広美さんも数年前から北部の各地で繁殖を確認しており、拡大を心配する。「外来種が入ることで在来植物の繁殖の場を奪うことになれば、これまでの生態系を崩すことになる。(生物多様性の乏しい)『緑の砂漠』になってしまいかねない」と強調。外来種を持ち込ませないために空港や観光地、自然公園などに泥落としマットを設置するなどの取り組みが必要との認識を示した。

 県自然保護課も状況を把握しており、本年度に取り組みに着手する方針。担当者は「他県の情報を収集しながら、分布状況の調査や対策マニュアル作成などを検討したい」と話している。  (小波津智也)

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