ムジナの尾に似た絶滅危惧種ムジナモ、消失したはずの国内自生地発見…命名は牧野富太郎

 絶滅危惧種の水生植物ムジナモの自生地を石川県内で発見したと、中央大などの研究チームが発表した。国内の自生地はこれまで、池の埋め立てなどの影響で消失したとされていた。ムジナモは、NHK連続テレビ小説「らんまん」主人公のモデルで植物学者の牧野富太郎(1862~1957年)が名付けた水草。チームは「非常に珍しい存在なので、これから何としてでも守っていきたい」としている。

 牧野は1890年に東京の江戸川のほとりの用水池でこの水草を見つけ、形がムジナ(アナグマ)の尻尾に似ていることからムジナモと命名した。

 その後、京都など複数の場所で確認されたが、池の埋め立てや水質悪化などにより1960年代後半までに国内の自生地が消失したとみられていた。現在は埼玉と奈良の両県の池で確認されているが、いずれも人の手で移した株が繁殖したものだという。

 チームの西原昇吾・中央大兼任講師(保全生態学)は昨年10月、20年以上にわたり生物の調査を続けている石川県内の農業用ため池でムジナモを発見した。ため池の所有者が近年、周囲の木を間伐し、日照時間が増えたため、池の底や地中に長年眠っていたムジナモの種子の発芽が促された可能性が高い。遺伝子解析の結果、発見した株は国内由来であることも確認した。

 水生植物に詳しい田中法生・国立科学博物館研究主幹の話「ムジナモの自生地発見の意義は大きい。生育場所が複数あれば、種の存続が脅かされるリスクが分散される。今後は自生地の保全活動や継続的な調査などが望まれる」

 ◆ムジナモ=水生の食虫植物の仲間。水に浮いて生育し、葉が変形した器官でミジンコなどを捕食する。自生地は世界全体で約50か所とみられ、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧種となっている。牧野富太郎は回顧録で「世界的珍奇な水草」と紹介し「時々思い出しては忘れもしない」と記述している。

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