外来マングース、奄美で根絶目前 希少種の天敵「元の自然に」 駆除にジレンマも・環境省

 世界自然遺産の鹿児島県・奄美大島で、環境省が駆除を進める外来種マングースの根絶が目前に迫っている。

 島の希少な固有種を捕食する問題が起きたためだが、もともとは人を襲うハブの駆除を期待して持ち込まれた経緯がある。関係者らは「人の都合でこうなった」とジレンマを抱えつつ、世界有数の多様な生態系を守る活動を続ける。

 奄美群島国立公園管理事務所の阿部愼太郎所長によると、マングースは1979年、約30匹が同県名瀬市(現奄美市)で放され島に定着した。しかし、ハブ駆除への効果はなく、より捕食しやすい希少種を襲うことが判明。アマミノクロウサギなど島固有の絶滅危惧種はさらに減っていった。

 繁殖力が強く、本格的な駆除が始まり、ピークだった2000年には推定約1万匹まで島内で勢力を拡大。事態を重視した環境省や地元住民は、05年施行の外来生物法にも基づき、わなによる捕獲や探索犬、毒餌も用いて段階的に駆除を進めてきた。これまでの捕獲数は約3万2000匹に上る。

 18年以降の5年間は、島内約470カ所に設置している自動撮影カメラにも映らなくなっており、早ければ今年度中に根絶が宣言される見通しだ。アマミノクロウサギの21年度の個体数は、推定で約2万匹と03年度の8倍以上に回復し、島は本来の姿を取り戻しつつある。

 一方、わなに掛かったマングースは、ほとんどがその場で死んでしまう。阿部所長は「人が関わらなければこの状況は起こり得なかった。元の自然に戻す責任は人にある」と強調する。

 南西諸島で絶滅危惧種の生息地保全に当たる世界自然保護基金(WWF)ジャパンの小田倫子さんは「当時はマングースの生態の基礎的な調査研究が不十分だった。人に都合がいい一面だけを捉えたことが不幸を招いた」と指摘する。

 その上で「生態系は生物同士の絶妙なバランスで成り立っている。奪わざるを得なかったマングースの命や、駆除に従事された方の涙と痛みを忘れず、新たな外来種を生み出さない教訓にしなければならない」と話した。 

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