養殖いけすから「4000匹」が逃げ出した!? クエタマが大量発生で鹿児島湾が大混乱

“自然界に存在しないはずの人工巨大魚”が鹿児島湾で大発生している。34年前からこの海に潜ってきた水中写真家の出羽慎一氏(53)が語る。

「ある時、海中の撮影をしていたら、見たことのないまだら模様の30㎝ほどの魚が泳いでいたんです。同じ魚の目撃情報は釣り人や漁師からも次々と挙がっています。私が把握しているだけでも、鹿児島湾の10ヵ所以上で見つかっています。これが、『クエタマ』という魚だったんです」

「クエタマ」は、高級魚のクエと世界最大のハタ類であるタマカイを掛け合わせて生まれた人工交雑魚。’11年に近畿大学で開発され、クエの味とタマカイの食感を併せ持つ魚として養殖が進み、昨年にはスシローにも登場、人気を集めていた。

 本来ならばいけすの中にしかいないはずの魚が、なぜ鹿児島湾にあふれているのか。湾を管理する垂水(たるみず)漁協の担当者は、「クエタマが釣れるという話は聞いています」と語るが、その原因は明らかになっていないという。だが、事情に詳しい漁業関係者は、声を潜めてこう明かす。

「’18年頃の台風で、3000~4000匹が入っていたいけすが壊れ、クエタマが鹿児島湾に大脱走したと噂になっています。養殖は漁協などに届け出がいらず、脱走しても報告する必要がないため”犯人”はわかっていません。ですが、浅瀬に20㎝ほどのクエタマが大量にいるところを目撃した人もいるそうです」

 大海原に放たれたクエタマは猛スピードで成長していると見られ、’19年頃には30~40㎝ほどだったクエタマが、現在では70~80㎝になっている。これほどの巨大魚は鹿児島湾にはほぼ存在しないため、最近になって釣り人や漁師たちの間で大騒ぎになっているという。東海大学海洋学部水産学科の秋山信彦教授は、現状にこう警鐘を鳴らす。

「クエタマは体が大きく肉食性なので、もともと自然界に生息する魚や甲殻類などを食べてしまう。海は広いですが、局所的に大量に自然界に出てしまえば、生態系のバランスが崩れる恐れがあります」

現在、近畿大学が研究用に飼育しているクエタマの成魚は、体長約1m・体重30㎏にも及ぶ。このまま野放しにしておけば、その影響は計り知れないだろう。

『FRIDAY』2023年3月17日号より

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