ペットのメダカ放流か…ラムサール条約湿地に観賞用とみられる個体 福井県の中池見湿地、野生種との交雑恐れ

 国際的に重要な湿地としてラムサール条約に登録されている福井県敦賀市樫曲の中池見湿地で、野生のメダカとは明らかに異なる体色の個体が見つかった。黒色の色素がなく、観賞用に品種改良されたメダカ「シロメダカ」の可能性がある。同湿地は国内に生息する2種類の一つ、キタノメダカの生息地で、種を定義する基準となる「タイプ標本」の産地に選定されており、野生種との交雑による悪影響が懸念される。

 日本には北日本集団のキタノメダカと、南日本集団のミナミメダカが分布し、敦賀市などの同県嶺南地域はキタノメダカ生息域の南限。近畿大学などの研究グループ「魚類自然史研究会」が2012年に発表した2種類のメダカの比較研究で、同湿地をキタノメダカのタイプ標本の産地に選定している。

 観賞用などに品種改良されたメダカは愛好家による交配などから700種以上いるという。一方で改良された魚の自然界への放流について、研究者などは海外や国内の別の場所から持ち込まれた魚に次ぐ「第三の外来魚」として問題視している。

 シロメダカとみられる個体は、湿地の保全や活用に取り組むNPO法人「中池見ねっと」理事の藤野勇馬さん(27)が昨年11月12日、湿地内の休耕田で発見した。キタノメダカと比較すると黒色の色素が欠乏しているように見える。野生での自然発生率は極めて低く、ペットとして飼育されていた個体が放流された可能性があるという。

 撮影には成功したが捕獲できていない。このため、下流のメダカと交雑しないよう休耕田の排水口に網を設置して移動を防ぎつつ、すくい取りによる捕獲を目指している。藤野さんは「ペットの放流は在来種のえさやすみかを奪う。仮に放流したのが在来種と同じ種類であっても交雑によって地域固有の遺伝子や特徴が失われるなど生態系に悪影響を与える」と問題点を指摘。「飼い始めた生き物は放流したりせずに最後まで責任を持って飼育してほしい」と訴えている。

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