”カエルの歌”で分布調査 見えてきた都市化の影響

 日本最大の関東平野の田んぼにはどんなカエルがいる? 東邦大学と国立環境研究所のチームが、たん水期の水田200カ所で鳴き声を録音して調べた。シュレーゲルアオガエルなど5種の生息と分布が分かった一方、温暖化や都市化、圃場(ほじょう)整備に伴う水路のコンクリート化の影響を受けている種類も見えてきたという。「カエルの鳴き声に耳を澄ませ、身近な水田環境を知ってほしい」と研究者たちは呼びかける。(栗田慎一)

関東平野全域では初の調査

 特定の地域や種類を絞ったカエル調査はあるが、関東平野全域で全種を対象にして調べたのは初めて。カエルの雄が繁殖期、雌を呼ぶために鳴く習性を利用した。

 調査は2018年5、6月、水田が広がる埼玉、千葉、茨城、群馬、栃木の河川流域で行った。捕獲や視認でなく、鳴き声を録音。誰でもできることから市民も参加し、人の生活音が消える夜間を中心に分担して調べ歩いた。

 チームは録音から2年かけて種類と分布を分析し、11月上旬、米国の科学誌「Wetlands」上で発表した。

確認された5種のカエル それぞれに傾向

 確認されたのは、ニホンアマガエル、トウキョウダルマガエル、シュレーゲルアオガエル、西日本在来のヌマガエル、特定外来種のウシガエルの5種。

 都市化などが進む埼玉県越谷市など平野中央部では、高温や乾燥に弱いシュレーゲルは数が少なかった一方で、水路のコンクリート壁を登れないトウキョウダルマは多かった。

 関東で急速に生息域を広げているヌマガエルは、千葉県東部の栗山川や茨城県の那珂川流域で確認されなかった。絶滅が危惧されているツチガエルは全域で確認されなかった。

 全体的に森林が残る千葉や茨城など平野の東側地域で、生息数や種類の多さが目立ったという。

 また、関東在来種のアズマヒキガエルや本州に広く生息するニホンアカガエルは、繁殖期が冬季に当たるため確認できなかった。

身近な水田にもっと関心を

 調査を指揮した東邦大理学部の松島野枝・博士研究員は「沖積平野の自然湿地は稲作が始まったことで水田に変わり、湿地生物のすみかになった。水田の生態系保全は、生物多様性を守ることにつながる。農業を維持しながらの共生を考えたい」と語り、身近な水田に多くの人が関心を持ってほしいと期待する。

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