広島県三次市吉舎町知和の人工湿地・灰塚ダム知和ウェットランドで、シダ植物のアカウキクサ属とみられる外来種や交雑種の浮草の大量発生が今秋以降続いている。沼地の水面の一部が浮草で覆われ、赤色に染まっている。水生生物への影響を防ぐため、10月下旬までの約1カ月間で除去したが、再び増え始めており関係者は苦慮している。
敷地面積約70ヘクタールにある沼地は9月上旬に赤く染まり始め、同月中旬には広範囲に広がった。浮草は茎の周りに葉がうろこ状に連なった直径1センチほどの大きさ。密集して水面に浮かび、日光を遮っている。
管理する国土交通省三次河川国道事務所灰塚ダム管理支所(三良坂町仁賀)は、水中の植物が枯れたり、そこに卵を産み付けるメダカやギンブナなどの魚に影響が出たりする可能性があるとして、業者に委託していったん取り除いた。
ところが、今月上旬から再び水面が赤く染まっている。同ランドの新堂雅彦館長(69)は「過去にも浮草が生えたことはあったが、除去すればなくなっていた。今年はなぜ」と困惑する。
サンプルを調べた「兵庫県立人と自然の博物館」の鈴木武研究員(60)=植物分類学=は、在来種ではなく、外来種のアメリカオオアカウキクサか、交雑種のアイオオアカウキクサと分析。「秋から冬にかけて赤くなるのが特徴で繁殖力が強い。残った一部が繁殖しているのかもしれない。広範囲に及ぶと完全に取り切るのは難しい」としている。