滋賀「西の湖」でアオコ大量発生 原因は湖水の異変、対策へ「泡」の新兵器

 琵琶湖最大の内湖「西の湖」(滋賀県近江八幡市)で近年、アオコが大量発生している。地元の水産、観光事業者らが頭を抱えており、滋賀県が水質改善に向けた実証実験に乗り出した。高濃度の酸素を含む直径1マイクロメートル未満の微細な気泡(ウルトラファインバブル)を湖底に送り込み、アオコの発生を抑制する全国的に珍しい取り組みという。

 かつて淡水真珠の養殖が盛んだった西の湖で、現在も母貝「イケチョウガイ」の養殖から手掛ける齋木産業(同市古川町)では、稚貝が思うように育たない状況が続いている。年間4万個の稚貝を育てる目標に対し、一昨年はおよそ1500個、昨年はゼロ、今年もわずか2個だった。齋木雅和社長(54)は「大きな原因はアオコ。養殖に使う湖水を見ても、緑色ですぐ分かる」と話す。

 アオコは、植物プランクトンの大量繁殖で水面が緑色の粉をふいたようになる現象をいう。西の湖では近年、アオコとなる特定の植物プランクトンが急激に増えている。

 齋木さんによると、増加しているのは稚貝の栄養にならないプランクトンで「稚貝は栄養不足で餓死しているような状態。この状態が続けば事業を継続する収入が確保できなくなる」とため息をつく。漁師の東春夫さん(84)=同市長命寺町=は「この5年くらいでひどくなった。魚にも臭いがついてしまう」と憂う。西の湖を巡る観光和船の船頭向井義治さん(74)=同市安土町=は「乗船客から臭いや見た目の悪さを指摘されることがある。いい思い出をつくってほしいのに」と残念がる。

 西の湖で発生したアオコが原因とみられる水道水のカビ臭発生などもあり、県は2020年度には西の湖に流入する河川の水質を調査し、原因究明と対策の検討を進めてきた。これまでの調査結果で特に注目したのが、湖水のリンの濃度だ。10年代後半ごろから県の目標値を大きく超えるようになり、17~21年度は目標値の約2~3倍に上る。県は、植物プランクトンの栄養素となるリンが湖底の土砂に堆積し、水中に溶け出している可能性が高いと推測する。

 貧酸素状態がリンの溶出を促すことから、実証実験では高濃度の酸素を含む気泡を湖底に供給し、リンの溶出防止や水質改善につなげる。専用の装置でつくるウルトラファインバブルは、水面に浮上したり消滅したりせず、水中に長時間とどまるのが特徴で、気泡を含む湖水を送り込むことで、アオコ発生の抑制に期待をかける。

 7~11月、アオコが発生しやすい西の湖湾奥部で装置を稼働し、周辺の水質を定期的に調査する。今後、県は実験の有効性を確かめるとともに、アオコの大量発生の原因などを分析し、本年度中に調査報告をまとめる。

 ウルトラファインバブルがアオコの発生抑制に活用された事例は人工の釣り池などに限られるといい、自然環境で広範囲で効果があるかは未知数だ。県琵琶湖保全再生課は「有効性が実証されれば、将来的に琵琶湖やほかの湖沼でも活用できれば」としている。

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