1年で“4万匹”駆除 天然記念物の天敵「赤いアイツ」を炊き込みご飯に!

 宮城県大崎市の天然記念物の淡水魚が、ある外来種の繁殖によって生存を脅かされています。生態系の回復には外来種の駆除が欠かせませんが、資源として有効活用するため、いま地域ぐるみの活動が行われています。「赤いアイツ」をあんな料理に変身?

 大崎市鹿島台にあるため池。およそ3万平メートルの広さがあり、豊かな生態系が育まれています。池には、1916年この地区にあった「旧品井沼」で発見され、現在は絶滅危惧種に指定されている淡水魚の「シナイモツゴ」など、多くの魚や水生昆虫が生息しています。

 しかし、ある生物の存在がそれらの生存を脅かしています。 ため池の厄介者の正体それは・・・、外来種のアメリカザリガニです。 魚や水生昆虫の生息に必要不可欠な水草を食べるなど、生態系に大きな影響を及ぼしています。

 先月28日、今シーズン初めてアメリカザリガニの駆除が行われました。参加したのは、シナイモツゴの保護活動をする「シナイモツゴ郷の会」のメンバーと地域住民です。この会は2013年から活動を行っていて、去年はおよそ4万匹を駆除しました。

シナイモツゴ郷の会 高橋清孝理事長 「ザリガニが入って生態系が破壊されている所は、やはり適切に防除して元々の環境を取り戻すことによって、絶滅危惧種の保存を続けていけると考えている」

 捕獲に使用するのがこちらの装置。会の理事長である高橋清孝さんが作りました。

シナイモツゴ郷の会 高橋清孝理事長 「アナゴかごを横に2個つなげてある。右側は明るい部屋、左側は遮光ネットを被せて暗くしてあります」

 餌のにおいに誘われて1度装置の中に入ると、外に出られないようになっています。また、暗い場所を好むザリガニの習性を利用し餌を食べた後、装置の奥に誘導する仕組みです。

 1週間前に設置された装置の中を見てみると・・・。この日とれた数は、なんと300匹以上。

 会では、活動開始当初は廃棄してきましたが、いまでは、膨大な量がとれるアメリカザリガニを資源として有効活用しています。

 仙台市内の中華料理店です。とれたアメリカザリガニは「食材」として使用されます。海外では、高級食材として食べられているほど人気です。 この店で提供しているのは素揚げしたアメリカザリガニを麻辣(マーラー)などの香辛料で炒めた料理。見た目は、真っ赤に色づいたザリガニそのもの。 その味は・・・?

後藤舜キャスター 「この尻尾の部分をいただきます・・・。全く臭みがありません。ぷりっぷりで、思ったよりも甘味が強いです。エビに近いような感覚ですね。おいしいです」

 アメリカザリガニを有効活用するため、地元の高校生も動き出しています。 それが「レシピの開発」。この日はシナイモツゴ郷の会のメンバーから調理方法を学びました。

 生徒たちが作った料理は2品。ミキサーにかけたザリガニからとれるエキスを使用した大分県の郷土料理「がん汁」風の汁物。ザリガニのゆで汁でご飯を炊きむき身を混ぜ込んだ「ザリガニの炊き込みご飯」。 初めて作ったザリガニ料理に、生徒たちも大満足の様子でした。

男子生徒 「おいしい。アマエビとそれほど変わらない。ザリガニのだしを取ってラーメンを作ってみたい」

女子生徒 「ザリガニがこんなにおいしいものになるとは思っていなかったし、大変だが作った後は、凄くおいしいということが伝わってきた」

シナイモツゴ郷の会 高橋清孝理事長 「これならかなり受けるのではないか。なかなか活動の輪が広がらないことが問題点だったが、こういうことを通して広がりができて、一般の人に食べてもらえる機会が増えればさらに良いと思う」

 豊かな自然のもとで生きる多くの在来種を守るだけでなく、外来種も資源として 無駄にしないよう地域をまき込んだ取り組みはこれからも続きます。

シナイモツゴ郷の会 高橋清孝理事長 「このまま放置すると、外来種などによって滅びてしまうというのも非常に多い。 今なんとか手を打たないとだめ。そういう活動を地域ぐるみでやっていけると、 次の世代に引き継いでいくことができるのではないかと思う」

 シナイモツゴ郷の会では、食材以外の活用方法としてアメリカザリガニの「肥料化」にも取り組んでいます。

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