釧路・春採湖のヒブナ、ギンブナと金魚の交雑種 DNAから判明

 北海道釧路市の春採湖に生息する緋色(ひいろ)の「ヒブナ」が、在来種のギンブナと約100年前に放流された金魚との交雑種であることが、京都大や釧路市立博物館などの共同研究グループのDNA分析で判明し、米科学誌「PLOS ONE」のオンライン版に掲載された。ヒブナはこれまでギンブナの突然変異で生まれたとされ、春採湖は「ヒブナの生息地」として国の天然記念物にも指定されている。

 共同研究グループはヒブナの起源を探るため、同湖から計61匹(ヒブナ35匹、ギンブナ26匹)を採集。国内をはじめ金魚の元となった野生系統が含まれる中国・黄河流域などの金魚やフナの遺伝的多様性の評価や集団遺伝解析・系統解析を行ったところ、35匹中27匹のヒブナに金魚と同じ配列のミトコンドリアDNAが見い出されたという。

 筆頭研究者の三品達平(みしな・たっぺい)・理化学研究所研究員(進化生態学)は「100年前の金魚の放流によって交雑が起きてしまったが、遺伝子のかく乱が起きないよう啓発、監視をしていきたい」とコメントした。

 ヒブナを巡っては、1937年の天然記念物指定に先立ち、調査に訪れた調査員に同行したアイヌ研究家で市立釧路図書館長の佐藤直太郎氏(故人)が、「ギンブナの突然変異」説に疑義を唱えていた。根拠として佐藤氏は、大正天皇の即位記念として金魚の稚魚3000匹を放流した記録のほか、アイヌの伝承にヒブナに関するものがないことや、「昔はいなかった」と語るアイヌの古老からの聞き取りなどを重ね、同図書館が59年に発行した「読書人」に4回にわたって研究報告を連載していた。【本間浩昭】

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