国の天然記念物だけど「外来種」 保護したカメ45匹は終生飼育か 矛盾に悩む市職員

 沖縄県の宮古島市役所は2013年ごろから、国の天然記念物であるセマルハコガメを保護している。宮古島は元々生息していない「外来種」だが、天然記念物のため文化財保護法で駆除が禁じられており、市が終生飼育をせざるを得ない。市民の持ち込みなどで、飼育数は45匹まで増加している。職員は「いつまで保護を続けないといけないのか。先行きが見えず途方に暮れている」と困惑している。(宮古支局・知念豊)

■動物園で引き取りも

 セマルハコガメは中国南部から台湾、八重山諸島(石垣島、西表島)が原産地で、1972年に国の天然記念物に指定された。一方、宮古島には本来生息していないため「外来種」として位置付けられている。

 島内での発見場所は、いこいの森公園や大野山林などの森林地帯が多く、国内外のどこから移入したのか不明だが既に定着していると考えられている。

 市ではこれまで、持ち込まれたセマルハコガメは沖縄本島の動物園に引き取ってもらっていたが、動物園での飼育数が増えたことから引き取りが難しくなり、2013年ごろから文化財の保護を担う生涯学習課で保護を始めた。今では34匹を飼育している。

■文化庁も対応に困惑

 外来種の駆除などを行う環境衛生課でも20年ごろから保護を始め、現在は11匹を保護。繁殖を避けるため、1匹ずつバケツに分けるなどして飼育している。

 担当者は、セマルハコガメが宮古島の希少種や固有種を捕食している可能性があると懸念を示す。「天然記念物ということで胃の内容物の調査もできない。希少種を食べていたのなら駆除の対象とすべきだ」と話す。

 県文化財課の担当者は、天然記念物として「保護」すべき存在である一方、生態系を脅かす外来種の側面もあることから、その矛盾に悩んでいると打ち明ける。

 文化庁にも報告しているが担当者も対応に困っている状態だという。「法律でどう対応すべきか明確に定まっておらず市も県も国も困惑している。関係機関と協議を続け、打開策を見いだしたい」と話した。

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