<2021年の記憶> 2021年は、動物が逃げ出す騒動が注目された。今年5月、横浜市で17日間に及ぶ全長3・5メートルのアミメニシキヘビ捕獲劇は記憶に新しい。ペットを含む飼育動物の逸走だけでなく、ワニガメなど外来生物の捕獲例も多数。ニホンザルなどの野生動物も住宅地に現れ、人などに被害を及ぼす事例も多かった。
ヘビ捕獲などの立役者となった日本爬虫(はちゅう)類両生類協会理事長で体感型動物園「iZoo」(イズー、静岡県河津町)白輪剛史園長(52)が、1年を振り返り、分析、検証した。【取材・構成=鎌田直秀】
5月22日、全長3・5メートル、体重約13キロのアミメニシキヘビが、飼い主宅の屋根裏で捕獲された。捜索当初から習性を踏まえて、アパート内や近場を強調していた白輪園長の知識を生かした大捕物劇。ペット、野生、種類に限らず、動物に対する意識を再確認する「逃げヘビ騒動」だった。
白輪園長 横浜の住民だけでなく、全国の方がヘビの動静に関心、恐怖心を抱き、世間を震撼(しんかん)させた。爬虫類が主役となって国民の安全安心を脅かすことはそれほど無かったのに、嫌われたり怖がられたりしてきたが、子どもを絞め殺すかもしれないことが現実の世界におりてきた。一方で爬虫類を飼っている人が多い事実と危険度の周知にもなった。ニシキヘビは知っていても「アミメ」の固有名詞は知られていなかったと思う。
鳴かない、におわない、小さなスペースでも飼育可能という3要素もあり、爬虫類人気は高まっている。女優の新垣結衣はトカゲ、タレント壇蜜がヘビなど女性ファンも多い。さらにコロナ禍の巣ごもりの影響で犬猫に限らず爬虫類の新規ペット需要は増えている。
白輪園長 「責任を持って飼いましょう」という啓発はしているが、野生由来の生物は常に人間が囲っている環境から逃げ出したい願望を持っている。その能力が上回れば逃げてしまう。知識の浅い方は未知の部分もあるので、来年以降も逃げてしまう事例は増えると思う。「逃げると思わなかった」と動物を擬人化してしまう方のほうが注意が必要。飼育者も販売者も私を含めて自覚が必要。
6月の“南米の怪鳥”ミナミジサイチョウや、オオカミ犬、10月のエミューなどは販売などを目的とした業者や牧場の不注意から逃げてしまった。外来種のアライグマやワニガメなどの目撃散見は、ペットとして飼育しきれずに森や池などに捨ててしまっている場合もある。
“あのアミメニシキヘビ”は飼い主から茨城県の業者に譲渡され、第2の“蛇生”を元気に送っている。白輪園長は園内で飼育展示するアミメニシキヘビを優しく見つめながら、「今年の漢字は…やっぱり『捕』かな」と記し、「逃げ○○」再発防止を願った。
白輪園長 爬虫類、両生類ならiZooに連れてきてくれれば引き受けます。今年は捕獲に始まり、捕獲に終わった1年でした。
◆白輪剛史(しらわ・つよし)1969年(昭44)2月1日生まれ、静岡市出身。体感型動物園iZoo園長、体感型カエル館KawaZoo館長、動物商。爬虫類イベント「ジャパンレプタイルズショー」を主催。幼少期から図鑑などで独学を重ね、静岡農高時にはTBS系「わくわく動物ランド」で爬虫類好き高校生として注目された。本業で繁殖などに貢献する一方、アミメニシキヘビ捕獲後はクイズ番組に解答者で出演するなど、テレビやラジオでも動物の魅力を伝えている。