社説:琵琶湖の水位 生活・環境への影響注視

 琵琶湖の水位が14年ぶりの低さになっている。

 9月以降に極めて雨が少なく、じわじわと低下が続いてきた。

 きのう午後5時現在の水位はマイナス65センチ。朝から久しぶりに滋賀県各地でまとまった降雨があったものの回復は限定的とみられ、当面は大きな改善は見通しにくいという。

 水位の大幅低下に伴い、漁業や船着き場での乗降などに支障が出ている。

 琵琶湖の水は、滋賀と下流の京都、大阪、兵庫の4府県で約1400万人の生活を支えている。一帯の生態系などを含めて影響を注視していく必要があるだろう。

 今秋は極端な雨不足に見舞われている。

 琵琶湖の水位は、梅雨や台風による洪水被害に備え、毎年6月16日~10月15日に、あらかじめマイナス20~30センチに下げる措置を取っている。

 ただ、今年は9月中旬以降、西日本への台風上陸がない上、秋晴れが続いて降水量が非常に少ない。10月末までの雨量は大津市で平年の45%、彦根市で26%にとどまっている。

 瀬田川洗堰(大津市)で水位操作をしている国土交通省琵琶湖河川事務所は、9月30日から放流量を生活用水などの確保に最小限の毎秒15トンにとどめている。だが、毎日約1センチずつ水位は低下し、今月中旬から2007年11月以来というマイナス60センチ割れが続いている。

 瀬田川特産のシジミ漁は、水位低下から船の航行区域が限られ、漁獲量が大幅に減っている。北湖の竹生島(長浜市)や沖島(近江八幡市)でも、船と桟橋との高低差が大きくなり、車椅子などでの乗降が難しくなっているという。

 これ以上の水位低下が進めば、船舶の航行、えり(定置網)漁に支障をきたし、生態系や景観を損なわないか懸念される。

 滋賀県は今月17日、県庁内に水位低下連絡調整会議を発足させ、生活への影響などの情報収集を進めている。

 マイナス75センチになれば、05年12月以来の「渇水対策本部」を設置し、節水の呼び掛けなどを議論する。02年の設置時は、マイナス94センチになった段階で県内5%、下流域10%の取水制限が3カ月余り実施された。暮らしや産業への打撃は小さくない。

 水資源には限りがあること改めて認識し、大切に使い続けられるよう普段からの節水にも心掛けたい。

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