琵琶湖でヤナギ「巨木化」問題のワケ 相次ぐ倒木、漁師「昔はほとんどなかった」

 琵琶湖や内湖の岸辺に群生するヨシ帯で、ヤナギの繁茂や巨木化が進んでいる。ヤナギはヨシの生育を妨げる一方、水中に張った根が魚の産卵場所になっているという側面もある。もともとあったヤナギが目立って繁茂するようになったのは、里山に人の手が入らなくなったのと同様に「里湖(さとうみ)」の管理が行き届かなくなったことの反映ともいえ、外来生物のように除去を徹底するだけでは解決できない難しさがある。

 「あの倒木が風で倒れたヤナギや」。山田漁業協同組合の横江久吉組合長(77)が漁船で北山田漁港(草津市)沖のヨシ帯に近づき、指をさした。青々とした葉を広げた大木がひっくり返り、細かく四方に伸びた根が湖面からむき出しになっていた。

 横江さんとともに湖岸を巡ると、ヨシ帯のあちこちに高さ10メートルを超すヤナギが確認できた。特にアカメヤナギは背が高く、台風などで倒れる例が後を絶たないという。

 水中に広がる根にモロコやフナが卵を産み付けるが、倒木すれば産卵場所としての機能が失われ、同じく魚の産卵や隠れ家になるヨシの生育場所も奪ってしまう。横江さんは「昔はヤナギなんてほとんどなかったが、この20年で目立ち始めた」と振り返る。

 県の調査によると、ヨシ群落におけるヤナギの比率は、琵琶湖岸で1992年に26・3%だったが、2013年には46・1%に拡大。内湖でも6・5%から12・6%に倍増した。

 琵琶湖の原風景ともいわれるヨシ帯の造成に取り組む県は、巨木化してヨシの生育を圧迫しかねないヤナギが3400本以上あるとみて伐採に取り組んでいる。しかし水辺での作業は難しく、真っすぐ伸びるスギやヒノキと違い、切るのに労力や時間がかかる。予算の制約もあり、毎年50本程度の伐採にとどまる。

 湖岸に増えるヤナギは在来種で、県はヨシ群落の構成要素にも含めており、全てを伐採するわけにもいかない。県琵琶湖保全再生課は「ヤナギの存在が問題なのではなく、ヨシとのバランスが大事」として、専門家や住民らでつくる県ヨシ群落保全審議会で保全の在り方を検討している。

 かつては住民によるヨシ刈りとともに大きくなる前に切られ、薪(たきぎ)などとして暮らしに生かされていた。そのためヤナギの繁茂は抑えられてきた。

 同審議会委員を務める野間直彦・県立大准教授(植物生態学)は「ヤナギの繁茂は自然の成り行きに任せるといった考え方もある」という。自然に任せず、より積極的にヨシ群落を保全していくのなら「持続性や二酸化炭素排出削減の観点から、かつてのように生活の中にヨシやヤナギを取り込む工夫が欠かせない」として、自然との共存のあり方について住民を巻き込んだ議論が必要と提言する。

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