ウシガエルの鳴き声は騒音?風物詩? 駆除対象だが、取り組み乏しく

 「ウシガエルの鳴き声がうるさくて眠れない」という悩みが、佐賀新聞「こちら さがS編集局」(こちさが)に寄せられた。投稿者は駆除を希望しているが「こんなこと行政では対応してくれませんよね…」と対処に困っている様子。ウシガエルは外来種で駆除の対象になるが、県内での取り組みは乏しく…。現状を調べた。

 自然愛護団体「ネイチャー佐賀」の観察会が2年前、杵島郡白石町の縫ノ池であった時のこと。同団体事務局の増田英治さん(66)=佐賀市=は、ウシガエルのオタマジャクシの多さに目を見張った。観察会は急きょ、駆除活動に変更。「名水といわれ、いい印象のある縫ノ池にもこれほどいるとは想像していなかった」と驚きを振り返る。

 環境省外来生物対策室によると、ウシガエルは北米原産で食用・養殖用として1918年に国内に持ち込まれ、今ではほぼ全国に分布する。体長12~18センチと大型で、オスは「ウオー」というウシに似た太い鳴き声が特徴。口に入るほとんどの動物を食べるほど捕食性が強く、希少な在来種を襲ったり生息域を奪ったりした例が各地にある。飼育や運搬、保管、放出のいずれも禁じられている特定外来生物に該当する。

 警戒心が強く、捕獲には「わなを使うのがお薦め」(同室)。5~9月の繁殖期に卵を除去したり、繁殖期後に池干ししたりするのも効果的だという。

 県内の状況について増田さんは「平野部を中心に、クリークや流れの緩やかな河川、池や防火水槽まで水辺の至る所にいるが、駆除を主に行っている団体はないと思う。生態系に与える影響についても体系的な調査研究は行われていないのでは」と語る。一方で「鳴き声については『またウシガエルが鳴く季節になったか』と風物詩のようにもなっている。うるさいと感じるか、季節の音と感じるかは人それぞれ」

 佐賀市環境政策課によると、ウシガエル駆除の相談は年に数件寄せられるが「市では捕獲していない」とホームページに明記する。「カニかご」と呼ばれる捕獲器の貸し出しを案内しており、年に数件は実際に貸し出しているという。

 全国に目を向けてもウシガエル駆除の取り組みは少ない。環境省は自治体や事業者による特定外来生物の駆除に交付金を出しているが、ウシガエル駆除への交付事例は「把握していない」(同室)。県の外来生物防除事業補助金も、ウシガエル駆除には少なくとも2011年度以降は助成実績がなく、申請もないという。

 県有明海再生・自然環境課は「助成の目的はあくまでも生物多様性の保全に向けた活動の支援。外来生物駆除そのものではない」としている。(志垣直哉)

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