増加するノヤギ実態調査 鹿児島県奄美大島内陸部は初 情報共有、効率的捕獲へ 県自然保護課

 奄美大島の内陸部で、野生化したヤギ(ノヤギ)が増加しており、実態を把握して対策を立てるため、県自然保護課は、同島での本格的な実態調査を行っている。前回の県による調査は2014年で、7年ぶり。内陸部の調査は県として初めて。

 もともとは海岸部やがけなどに生息していたが、徐々に内陸部に広がってきたとみられ、世界自然遺産の登録地内でも目撃されている。る。下層植生がノヤギによって食べられ、森の生態系に影響を及ぼす。環境省奄美群島国立公園管理事務所によると、島内全域に設置したセンサーカメラによるモニタリング結果では、14年度から20年度までにノヤギの撮影頻度は約6・6倍に増加。奄美マングースバスターズによる個体や鳴き声、ふんの目撃情報は、大和村や奄美市住用町のスタル俣線、三太郎線付近で多くなっているという。

 県から調査業務を委託された、一般財団法人・鹿児島県環境技術協会環境調査部環境生物課主査の稲留陽尉さんによると、〈1〉各市町村担当者や猟友会、奄美マングースバスターズなどからの聞き取り調査と過去の文献・資料との比較調査〈2〉海上調査〈3〉森林調査〈4〉ドローンを使った調査―を行うという。

 海上調査は船上から海岸部にいるノヤギを数える調査で、夏の早朝に8ルートで実施。  森林調査は森林内にセンサーカメラを20台ほど設置し、8月初旬から年内にかけて撮影データを取っていく。試験的に音声録音装置も設置し、音声データも取る。世界自然遺産の登録地域とその周辺に設置予定だという。

 ドローン調査は赤外線カメラを搭載して、熱感知によるノヤギの把握ができないかを試験的に行うもので、海上調査でノヤギが多く見られたエリアで行うことになっている。

 これらの調査結果を整理し、市町村の関係部署に向けた報告会を年度内に行う予定。「課題を共有し、捕獲方法や後処理などについても提案できたら」と稲留さんは考えている。  県自然保護課は「海岸部は14年度に沖から船で調査したが、内陸部を調査するのは県としては初めて。内陸部の推定個体数と分布状況を調べて市町村に情報共有し、効率的な捕獲につなげていきたい」と話した。

 ノヤギは国際自然保護連合(IUCN)が定めた世界の侵略的外来種ワースト100にも指定されており、食害による希少野生植物を含む植生の破壊によって、土砂崩壊等被害が発生している。食肉用として導入した家畜のヤギが飼育放棄され、野生化した。同島では2008年に5市町村で「ヤギの放し飼い防止等による条例」が施行されている。

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